2018年2月16日金曜日

関関同立対決:同志社大理工学部VS関西学院大理工学部

 関関同立の中の「上位校」として比べられることの多い、同志社大と関西学院大。今回は両校の「理工学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。
(一般的な評価は「同志社大が優勢」という評価のようだが、果たしてその評価が正しいのか検証していく)。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度同志社大学
理工学部
関西学院大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20152673323122
学部の学生数(人)学部201533982132
入試難易度(河合塾)学部20166052.5
入試難易度(駿台)学部20165855
入試難易度(ベネッセ)学部20167064
入学者数(人)学部2016839796
競争入試での入学者(人)学部2016529450
競争入試の割合(%)学部201663.10%56.50%
現役入学者の比率(%)学部201671.377

 入試難易度は3社とも同志社大理工学部が上の数値を出している。それも、結構な差が出ているため、「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、同志社大理工学部に軍配が上がる。
 なお、「競争入試の割合」は同志社大理工学部が高い。いわゆる偏差値操作の可能性については、あまり考慮には入れなくて良いだろう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があため、本ブログでは、競争入試の割合を比較している)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度同志社大学
理工学部
関西学院大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015633544
学生還元率(%)大学201540.40%35.10%
奨学費(円)大学20151741210343996,236,718
学生一人当たりの奨学費(円)大学201565,13343,086
卒業率(%)学部201477.671.8
最寄駅の平均家賃(万円)20163~3.53.5~4

 4年間でかかる学費については、関西学院大理工学部が89万円ほど安いが、学科や専攻によって学費が違うため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
 一方で、学生還元率や一人当たりの奨学費は同志社大が多く、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、同志社大に軍配が上がる。
 なお、キャンパス周辺の家賃を比較してみると、ほとんど同じとなることが推測される。
 また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、同志社大の方が低い。6%程度の差があるため、参考にはなる数字だろう(言うまでもなく、留年した場合には余計に学費がかかる)。
 上記を総合すると、コスト面では、学費次第(進学する学科・専攻次第)ではあるが、その他の面では同志社大がやや優勢といえる。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度同志社大学
理工学部
関西学院大学
理工学部
キャンパス学部2016京田辺【郊外型】神戸三田【郊外型】
1年以内退学率(%)学部20141.51.9
4年間退学率(%)学部201458.4
入学者の地元占有率(%)学部201614.136.5
女子入学者の割合(%)学部201616.726
大学全体の女子学生数(人)大学20161134911390
大学全体の男子学生数(人)大学20161570412108
大学全体の女子学生比率(%)大学201642.00%48.50%
女性ファッション誌
登場人数(人)
大学20111945
受入留学生数(人)学部20156812
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20162.00%0.60%
長期留学派遣学生数(人)大学201523396
長期留学派遣の割合(%)大学20153.50%1.70%
ST比(人)学部201532.416.3
専任教員数(人)学部2015105131
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.912.6

<キャンパスの立地>
 同志社大理工学部は京都駅からのアクセスだと近鉄で30分の興戸駅から徒歩15分の「京田辺キャンパス」で4年間を過ごす。率直に言うと、アクセスはあまりよくない。その分、緑いっぱいの広大なキャンパスで伸び伸びとした学生生活を送ることができる。研究をしたい理系学生にとっては悪い環境ではない。
 一方の、関西学院大理工学部は、JR宝塚線三田駅または神戸電鉄公園都市線南ウッディタウン駅からバスで10分強の場所にある「神戸三田キャンパス」で4年間を過ごす。「神戸」と名がついているが、郊外キャンパスであり、交通アクセスはあまり良いとは言えない。周囲は新興住宅地であり、街並みは綺麗であるが、学生街などはない。しかし、キャンパスは関西学院大のオシャレなイメージを体現したような、綺麗な建物が並ぶ。アクセス面以外では大きなマイナス面のないキャンパスである。
 キャンパスの立地については、京都府と兵庫県で単純比較は難しい。双方とも郊外型キャンパスであり、単純な交通の便で言えばほぼ互角だろうか。価値観によってどちらが良いと思うかは異なると思われるため、実際に足を運んで、自分の目でキャンパスを確認することをおすすめする。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、同志社大理工学部の方が低い。理系学部の退学率は一般的に高くなる傾向にあるが、同志社大理工学部はかなり優れた数値を誇っている。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、関西学院大理工学部の女子学生比率が10%ほど高い(大学全体としての差は6%)。
 また、外国人留学生の割合については、同志社大理工学部が勝っている。同志社大理工学部の方がより「学習環境が国際的である」と言えるだろう。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、同志社大に軍配が上がる。長期留学派遣比率で2倍以上の差があるからだ。ただし、この数値は大学全体の数値となっており、理工系の学生の留学率はこの数値より低くなることが想定されるため、そのあたりご留意いただきたい。
 一方、専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、関西学院大理工学部が低い。「少人数教育」の環境は関西学院大理工学部の方が整っていると言える。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、僅差であるものの、関西学院大が勝っている。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、同志社大が18人、関西学院大が6人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、同志社大が9人、関西学院大が8人であり、高校側の印象では、やや同志社大が優勢である。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、同志社大は16位(37ポイント)、関西学院大は36位(14ポイント)となっている。こちらも、同志社大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、ほぼ互角という印象である。大きな判断材料は、やはりキャンパスの立地になるだろうか。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度同志社大学
理工学部
関西学院大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201632.528.2
卒業生数(人)学部2015721472
進学者数(人)学部2015386189
進学率(%)学部201553.50%40.00%
公務員就職者数(人)学部2015129
公務員就職比率(%)学部20151.70%1.90%
警察官就職者数(人)大学20151930
国家公務員総合職(人)大学2015269
CA採用数(人)大学20141131
国会議員の数(人)大学201535
上場企業の社長数(人)学部20068数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201555613576
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.210.15
上場企業の役員数(人)学部200682数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015472399
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0180.017

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、同志社大が4%程度高い数字が出ている。しかし、この数字は大学全体の数字であり、理系学部の場合は優秀な学生は大学院に進学するケースが多いことが想定されるため、一種の「参考数値」として見ていただきたい。

<大学院に進学する>
 進学率は、同志社大理工学部の方が、13%程度高い。大学院進学を想定しているのであれば、同志社大理工学部の方が良いだろう。もっとも、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、単純比較はできない側面もある。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、関西学院大理工学部の方がやや高い数字が出ているが、ほとんど差はない。公務員就職では互角といえる。

<主要な就職先の比較>

同志社大学
理工学部
関西学院大学
理工学部
パナソニック兵庫県教育委員会
日立製作所三井住友銀行
トヨタ自動車TIS
三菱電機DTS
本田技研工業
関西電力
ダイキン工業
日本電気
豊田自動織機
野村総合研究所

 同志社大の就職先リストは「理系系学部全体」のデータとなっている。また、関西学院大理工学部のデータが少ないため、単純比較はできないが、主観を交えて言うなれば同志社大理工学部の方が就職実績は上の印象を受ける。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、同志社大理工学部に軍配が上がる。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。そういう意味で、「上場企業の役員になりやすさ」等は同志社大理工学部の方が高く、もし出世を期待するのであれば同志社大学理工学部の方が少しは有利かもしれない。もちろん、企業によって事情は異なるし、関西学院大理工学部だからといって不利になることはないだろうが、あくまでも「少しは」といった程度である。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度同志社大学
理工学部
関西学院大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015583,280639,494
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152228

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、関西学院大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。
 なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、同志社大が17位(21ポイント)、関西学院大はランク外(51位以下、6ポイント以下)であり、高校現場の印象では、同志社大の改革イメージが強いようだ。

<まとめ>
 以上、同志社大理工学部と関西学院大理工学部を比較してみてきた。全体としては、やや同志社大理工学部が優位であると言える。キャンパスライフでは互角であるが、入学時の学力と就職実績で差が見られる。
 一方で、最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。