2017年12月1日金曜日

MARCH対決:法政大理工学部VS明治大理工学部

 ともに東京六大学の一員、そしてMARCHの一員として知られる、法政大と明治大。今回は双方の「理工学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。

 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。

「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度法政大学
理工学部
明治大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20152711030538
学部の学生数(人)学部201523094194
入試難易度(河合塾)学部20165560
入試難易度(駿台)学部20164856
入試難易度(ベネッセ)学部20166468
入学者数(人)学部20165491025
競争入試での入学者(人)学部2016405688
競争入試の割合(%)学部201673.80%67.10%
入試方式の数(競争入試)学部201545
現役入学者の比率(%)学部20167573.9

 入試難易度は3社とも、明治大理工学部が上の数値を出している。これだけ明確な結果であれば、偏差値的には明治大理工学部が上であると判断できる。
 「競争入試の割合」は法政大理工学部がやや高いが、大きな差はない。予備校が出している難易度は額面通りに受け取っていいだろう。
(MARCHクラスの大学では、競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。偏差値操作の実態を加味するため、本ブログでは「競争入試の割合」を比較するようにしている)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度法政大学
理工学部
明治大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部20151187641
学生還元率(%)大学201538.00%52.90%
奨学費(円)大学2015994,270,1471,382,901,203
学生一人当たりの奨学費(円)大学20153667545285
卒業率(%)学部201483.679.3
最寄駅の平均家賃(万円)20164.5~53.5~4

 4年間でかかる学費については、法政大理工学部の数値がかなり高めにでているが、学科や専攻によって学費が違うため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
 学生還元率や一人当たりの奨学費は明治大が多く、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、明治大に軍配が上がりそうだ。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみてると、明治大の方が割安である(そもそも都心のキャンパスは徒歩圏内に住む学生は少ないだろうが、大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、明治大理工学部が4%ほど高いが、差は大きくないため判断材料にはならないだろう。
 以上を総合すると、コストパフォーマンス的には明治大が有利といえるだろう(ただし、入学する学科・専攻次第で学費が変わるため、状況により有利・不利は変わるだろう)。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度法政大学
理工学部
明治大学
理工学部
キャンパス学部2016小金井【郊外型】生田【郊外型】
1年以内退学率(%)学部20140.91.9
4年間退学率(%)学部20144.35.3
入学者の地元占有率(%)学部201631.530.5
大学全体の
首都圏出身比率(%)
大学201561.663.9
女子入学者の割合(%)学部201613.516.9
大学全体の女子学生数(人)大学20161050910545
大学全体の男子学生数(人)大学20161806720289
大学全体の女子学生比率(%)大学201636.80%34.20%
女性ファッション誌
登場人数(人)
大学201165
受入留学生数(人)学部201525112
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.10%2.70%
長期留学派遣学生数(人)大学20157286
長期留学派遣の割合(%)大学20151.10%1.10%
ST比(人)学部20153026.2
専任教員数(人)学部201577160
一人当たり貸出冊数(冊)大学20157.49.6

<キャンパスの立地>
 法政大学理工学部は、JR中央線で新宿から25分の東小金井駅が最寄り駅で徒歩15分の場所にキャンパスを構えている。交通の便はあまり良くないが、「田舎」というほどのキャンパスでもない。周りは住宅街であり、静かな学習環境である。
 対して、明治大理工学部は、川崎市の生田で4年間を過ごす。都会とは言えない、「郊外型キャンパス」となっている。ただし、一般的に「遊ぶ暇があまりない」といわれる理系学生にとっては、悪くない環境であろう。
 キャンパスの立地については、甲乙つけがたく、ほぼ互角とみていいだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、4年トータルで見ると法政大理工学部の方がやや低い。しかし、明治大理工学部も数値としては低いため、判断材料にはならないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、法政大は18位(35ポイント)、明治大が4位(117ポイント)となっており、高校教育の現場においては、明治大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、女子学生の比率については、明治大理工学部が高いが、差はほとんどなく、誤差の範囲である。
 留学生比率については明治大理工学部が高い。国際的な教育環境という意味では、明治大理工学部が優位といっていいだろう。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合を見ると、互角である。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、明治大理工学部が少なく、「少人数教育」の環境としては明治大理工学部が勝っているといえる。
 学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、やや明治大が多い。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、法政大が6人、明治大が26人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、法政大が17人、明治大が19人であり、高校側の印象では、明治大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ(法政大は「伸び悩んだ」という印象が強いのが、気になる材料ではある…)。
 その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、法政大は47位(11ポイント)、明治大は6位(86ポイント)となっており、同じように、明治大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、明治大理工学部がやや優勢のような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値
単位
数値年度法政大学
理工学部
明治大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201622.526.7
卒業生数(人)学部2015488944
進学者数(人)学部2015129356
進学率(%)学部201526.40%37.70%
公務員就職者数(人)学部2015516
公務員就職比率(%)学部20151.00%1.70%
警察官就職者数(人)大学20155736
国家公務員総合職(人)大学2015625
CA採用数(人)大学20142011
国会議員の数(人)大学20151116
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201569719580
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.260.31
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
76
上場企業の役員数(人)大学2015341650
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0130.021

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、明治大の方が高い数字が出ている。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、明治大理工学部と法政大理工学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかを選ぶという判断材料にはなりえないだろう。
(法政大学キャリアデザイン学部の筒井美紀氏は著書で「大学選びよりゼミ選びが100倍大切」と言っているほどであり、進学した大学で何をやるかが重要である)

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、明治大理工学部の方が高い。大学院進学を目指すのであれば、明治大理工学部の方がいいだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、明治大理工学部が高い。ただし、絶対的な数値としては高くないため、どちらが有利とはいえないだろう。

<主要な就職先の比較>

法政大学
理工学部
明治大学
理工学部
スズキ日立製作所
NECソリューションイノベータ本田技研工業
日立システムズ三菱電機
メイテックグループキヤノン
NECネッツエスアイ清水建設
ソフトバンクグループいすゞ自動車
ANAエアポートサービス大林組
ANAウィングスオリンパス
バニラエア大成建設
東日本旅客鉄道東京電力ホールディングス
※上記は大学院含む

 主要就職先については、明治大の方は「大学院」を含んでいるため、単純比較はできない。よって参考程度にご覧いただきたい(大学院を含んでいる分、明治大の方が見栄えのいい企業名が並んでいる)。

<出世した先輩の多さ>
 双方とも名門大学であり、上場企業の役員などを数多く輩出しているが、より明治大理工学部の方が輩出実績は高いため、学閥の面では明治大理工学部が優位といえる。

<上位校との差について>
「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、法政大や明治大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、もう一つ上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度法政大学
理工学部
明治大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015446,556738,498
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151624

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、明治大が優勢である。
 別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、法政大が12位(54ポイント)、明治大が6位(130ポイント)となっており、全般的な「改革力」としては明治大が勝っているようだ。
 
<まとめ>
 以上、法政大理工学部と明治大理工学部を比較してみてきたが、全体の結果としては、明治大理工学部の方が優勢といえるだろう。
 しかし一方で、強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。