2018年1月5日金曜日

関関同立対決:立命館大生命科学部VS関西大化学生命工学部

 関関同立の中でのライバルとして知られる、立命館大と関西大。今回は立命館大生命科学部と関西大化学生命工学部に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。

 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値
単位
数値年度立命館大学
生命科学部
関西大学
化学生命
工学部
大学全体の学部生数(人)大学20153230128642
学部の学生数(人)学部201512301502
入試難易度(河合塾)学部20165555
入試難易度(駿台)学部20165652
入試難易度(ベネッセ)学部20166562
入学者数(人)学部2016296366
競争入試での入学者(人)学部2016215226
競争入試の割合(%)学部201672.60%61.70%
現役入学者の比率(%)学部201671.3数値なし

 入試難易度は立命館大生命科学部の2勝1分の数値となっている。予備校としてはやや立命館大生命科学部が上とみているようだ。なお、「競争入試の割合」は、立命館大生命科学部が高いため、実際の難易度の差はもっと開いていると考えてもいいかもしれない。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もあるため、本ブログでは、「競争入試の割合」を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値
単位
数値年度立命館大学
生命科学部
関西大学
化学生命
工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015633630
学生還元率(%)大学201545.30%40.20%
奨学費(円)大学20154,964,183,9301,501,165,119
学生一人当たりの奨学費(円)大学201515368552411
卒業率(%)学部201481.384.3
最寄駅の平均家賃(万円)20163.5~43.5~4

 4年間でかかる学費については、関西大化学生命工学部が3万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 学生還元率や一人当たりの奨学費は立命館大が多く、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、立命館大に軍配が上がる(医学部を持たない大手私立大の中では、立命館大がトップレベルの学生還元率、一人当たりの奨学費を誇っており、学生視点の大学運営として評価できる)。
 キャンパス周辺の家賃を比較してみると、ほぼ同じである。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、3%ほど立命館大生命科学部が高い。しかし、僅差であるため気にする差ではないだろう。
 コスト面を総合して考えると、ほぼ互角といえるだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値
単位
数値年度立命館大学
生命科学部
関西大学
化学生命
工学部
キャンパス学部2016びわこ・くさつ
【郊外型】
千里山
【中間型】
1年以内退学率(%)学部20142.30.3
4年間退学率(%)学部20145.95.6
入学者の地元占有率(%)学部201612.654.4
女子入学者の割合(%)学部201637.830.3
大学全体の女子学生数(人)大学20161192811398
大学全体の男子学生数(人)大学20162065217170
大学全体の女子学生比率(%)大学201636.60%39.90%
女性ファッション誌
登場人数(人)
大学2011717
受入留学生数(人)学部2015167
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.30%0.50%
長期留学派遣学生数(人)大学201525024
長期留学派遣の割合(%)大学20153.10%0.30%
ST比(人)学部201520.527.8
専任教員数(人)学部20156054
一人当たり貸出冊数(冊)大学201516.611.3

<キャンパスの立地>
 立命館大生命科学部は、京都ではなく滋賀県にある「びわこ・くさつキャンパス」で4年間を過ごす。JR東海道線南草津駅からバスで10分の場所である。郊外型キャンパスではあるが、電車の便はさほど悪くはない(京都駅からの所要時間は40分とさほど長くない)。このキャンパスの魅力はその広さであり、甲子園球場の15倍程度といわれており、のびのびと学生生活が送れそうなキャンパスである。
 一方の関西大化学生命工学部は、大阪のターミナル駅梅田から電車で25分、阪急千里線の関大前駅から徒歩5分の「千里山キャンパス」で4年間を過ごす。周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。利便性の高いキャンパスと言えるだろう。
 キャンパスの立地については、単純な電車通学の便など「利便性」で言えば関西大化学生命工学部が優位といえる。多くの人は関西大化学生命工学部のキャンパスに魅力を感じるだろうが、価値観によってどちらで大学生活を送りたいかという判断は異なるため、実際に足を運んで自分の目で確かめることをお勧めする。
 
<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、関西大化学生命工学部が低い。ただし、トータルで見るとほぼ互角といっていいだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、立命館大が8位(65ポイント)、関西大はランク外(24ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、立命館大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、女子学生比率については、立命館大生命科学部が高い。
 外国人留学生の割合については、立命館大生命科学部が勝っており、国際的な教育環境で優位に立っている。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、立命館大に軍配が上がる。しかし、その差は10倍あり、かなりの差となっている。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、注目したい数値である。しかし、この数値は主に文系学部が主体であるため、理系学部においては参考程度に見ておいたほうが良いだろう。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、立命館大生命科学部が少ない。「少人数教育」の環境は、立命館大生命科学部が勝っているといえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、立命館大の方が勝っている。この数値は、落ち着いた環境で勉強できるキャンパスの特性などが影響しているのかもしれない。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、立命館大が20人、関西大はランク外(5人以下)、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、関西大が13人、立命館大が12人であり、高校側の印象では、立命館大の方が教育力があると認識しているようだ。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、立命館大は28位(17ポイント)、関西大は20位(25ポイント)となっている。こちらでは、関西大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点では、やや立命館大生命科学部が優位といえるだろうか。
 

「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値
単位
数値年度立命館大学
生命科学部
関西大学
化学生命
工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201623.520.6
卒業生数(人)学部2015291337
進学者数(人)学部2015164133
進学率(%)学部201556.40%39.50%
公務員就職者数(人)学部20151411
公務員就職比率(%)学部20154.80%3.30%
警察官就職者数(人)大学20155156
国家公務員総合職(人)大学20152810
CA採用数(人)大学20142210
国会議員の数(人)大学201586
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
※8
社長の数(人)大学201537544475
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.120.16
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
※77
上場企業の役員数(人)大学2015275351
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0090.012
※関西大の学部単位の社長数、役員数は「工学部」時代の数字

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、立命館大が3%程度高い数字が出ている。ただし、これは僅差と言えるため、判断材料にはならないだろう。

<大学院に進学する>
 進学率は、立命館大生命科学部の方が高い。大学院進学においては立命館大生命科学部が優位といえる。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、立命館大生命科学部の方がやや高い数字が出ている。公務員就職においても、立命館大生命科学部が優位である。

<主要な就職先の比較>

立命館大学
生命科学部
関西大学
化学生命
工学部
旭化成ファーマ大阪府教員
アステラス製薬天龍化学工業
カゴメ旭化成ホームズ
協和発酵キリンNTN
田辺三菱製薬大阪府警察
日本食研ホールディングス近鉄グループホールディングス
日本電産三栄源エフ・エフ・アイ
富士通シーピー化成
丸大食品ジェイテクト
森永乳業吹田市職員

 主要就職先については、双方とも安定企業が並んでおり、優劣はつけられない。どちらも就職実績は良好といえるだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、ほぼ互角といえる。双方とも関西の名門大学として、多数の上場企業社長・役員を輩出している。そういった意味で、学閥の面で有利・不利はほとんどないと考えていいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値
単位
数値年度立命館大学
生命科学部
関西大学
化学生命
工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学20151,066,855682,253
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20153324

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、立命館大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。
 なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、立命館大は1位(259ポイント)、関西大が44位(8ポイント)、であり、高校現場の印象でも、立命館大の改革イメージの強さが際立っている。

<まとめ>
 以上、関西大化学生命工学部と立命館大生命科学部を比較してみてきた。全体としては、やや立命館大生命科学部が優位の印象である。
 一方で、強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。