2018年3月15日木曜日

関関同立対決:関西大学システム理工学部VS関西学院大学理工学部

 今回の比較対象は、「関関同立」の中のライバル校同士である関西大と関西学院大。関西大学システム理工学部と関西学院大学理工学部の両方に合格した場合はどちらに進学した方が良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。

 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値
単位
数値年度関西大学
システム
理工学部
関西学院大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20152864223122
学部の学生数(人)学部201522892132
入試難易度(河合塾)学部201652.552.5
入試難易度(駿台)学部20165155
入試難易度(ベネッセ)学部20166064
入学者数(人)学部2016533796
競争入試での入学者(人)学部2016357450
競争入試の割合(%)学部201667.00%56.50%
現役入学者の比率(%)学部2016数値なし77

 入試難易度は関西学院大理工学部の2勝1分けという結果となっている。河合塾は同値であるものの、「ベネッセ」と「駿台」は関西学院大理工学部の方が上の数値を出している。「競争入試の割合」は関西大システム理工学部がやや高く、実態としてはかなり僅差で関西学院大学理工学部の方が上といえようか。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があるため、「競争入試の割合」を本ブログでは比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値
単位
数値年度関西大学
システム
理工学部
関西学院大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015630544
学生還元率(%)大学201540.20%35.10%
奨学費(円)大学20151,501,165,119996,236,718
学生一人当たりの奨学費(円)大学20155241143086
卒業率(%)学部201472.771.8
最寄駅の平均家賃(万円)20163.5~43.5~4

 4年間でかかる学費については、関西学院大理工学部の方が86万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 一方で3、学生還元率や一人当たりの奨学費では関西大が優勢となっている。
 一人暮らしをする場合のキャンパス周辺の家賃を考えてみると、ほぼ互角である。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほとんど変わらず、誤差の範囲内である。
 以上の通り、コスト面では、学費の差が大きいため関西学院大理工学部が優勢と言っていいだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値
単位
数値年度関西大学
システム
理工学部
関西学院大学
理工学部
キャンパス学部2016千里山
【中間型】
神戸三田
【郊外型】
1年以内退学率(%)学部20140.91.9
4年間退学率(%)学部20148.38.4
入学者の地元占有率(%)学部20165436.5
女子入学者の割合(%)学部20166.826
大学全体の女子学生数(人)大学20161139811390
大学全体の男子学生数(人)大学20161717012108
大学全体の女子学生比率(%)大学201639.90%48.50%
女性ファッション誌
登場人数(人)
大学20111745
受入留学生数(人)学部20152412
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.00%0.60%
長期留学派遣学生数(人)大学20152496
長期留学派遣の割合(%)大学20150.30%1.70%
ST比(人)学部201526.616.3
専任教員数(人)学部201586131
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.312.6

<キャンパスの立地>
 関西大システム理工学部は、大阪のターミナル駅梅田から電車で25分、阪急千里線の関大前駅から徒歩5分の「千里山キャンパス」で4年間を過ごす。周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。利便性の高いキャンパスと言えるだろう。
 一方の、関西学院大理工学部は、JR宝塚線三田駅または神戸電鉄公園都市線南ウッディタウン駅からバスで10分強の場所にある「神戸三田キャンパス」で4年間を過ごす。「神戸」と名がついているが、郊外キャンパスであり、交通アクセスはあまり良いとは言えない。周囲は新興住宅地であり、街並みは綺麗であるが、学生街などはない。しかし、キャンパスは関西学院大のオシャレなイメージを体現したような、綺麗な建物が並ぶ。アクセス面以外では大きなマイナス面のないキャンパスである。
 キャンパスを比較すると、アクセス面での差が大きいため、全般的には関西大が優位だろうか。しかし、関西学院大のキャンパスの雰囲気も捨てがたいため、実際に足を運んで自分の目で確かめることをお勧めする。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は関西学院大理工学部がやや低い。しかし4年退学率はほとんど変わらない。したがって、退学率が大学選択の判断材料にはならないといえるだろう。
 なお、大学通信社による2014年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、関西大は36位(19ポイント)、関西学院大は上位50位以下のランク外(14ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、関西大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、学部単位の女子学生比率については、関西学院大理工学部の方が20%程度高い。これはかなりの差である。
 また、外国人留学生の比率については、関西大システム理工学部が多く、教室内の国際性という意味では、関西大システム理工学部がやや優れているといえる。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学派遣率が高い関西学院大が優勢といえるだろう。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないだろう。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、関西学院大理工学部の方が少なく、「少人数教育」の環境もより整っているといえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、関西学院大の方が少し多いがほとんど差はないと考えていいだろう。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、ほぼ互角という印象である。大きな判断材料は、やはりキャンパスの立地になるだろうか。繰り返しになるが、実際にキャンパスを訪れてみることもおすすめする。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値
単位
数値年度関西大学
システム
理工学部
関西学院大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201620.628.2
卒業生数(人)学部2015504472
進学者数(人)学部2015172189
進学率(%)学部201534.10%40.00%
公務員就職者数(人)学部2015119
公務員就職比率(%)学部20152.20%1.90%
警察官就職者数(人)大学20155630
国家公務員総合職(人)大学2015109
CA採用数(人)大学20141031
国会議員の数(人)大学201565
上場企業の社長数(人)学部2006※8数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201544753576
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.160.15
上場企業の役員数(人)学部2006※77数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015351399
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0120.017
※関西大システム理工学部の学部単位の社長数、役員数は「工学部」時代の数字

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、関西学院大が8%ほど高い。ただし、男子学生のみで考えると、両校の差はわずかになるだろう。というもの、主要400社の就職率データには「一般職」での就職が含まれており、その場合は「総合職」より入社しやすい傾向がある。関西学院大は関西大と比べて女子学生比率が10%ほど高く、この「400社就職率」が高く出やすい。男子学生で「一般職」を選ぶケースはほぼないと考えられることから、「総合職」として400社に就職できる可能性は、数%の差に縮まると考えて良いだろう。
 また、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、関西大システム理工学部と関西学院大理工学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶ判断材料にはなりえないだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、関西学院大理工学部の方が高い。もっとも、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、単純比較はできない側面もある。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、ほとんど変わらないため、判断材料にはならないだろう。

<主要な就職先の比較>

関西大学
システム
理工学部
関西学院大学
理工学部
大阪府教員兵庫県教育委員会
三菱電機三井住友銀行
クボタTIS
西日本旅客鉄道DTS
ローム
エクセディ
警視庁
ジェイテクト
トランス・コスモス
奈良県教員

 主要就職先の比較においては、関西学院大のデータが少ないため、単純比較はできない。双方とも、教員になるケースが多いようである。民間企業の就職先についても、業界がバラバラであり、やはり学部卒業段階では「文系」学部の卒業生と似た進路になるような傾向が出ているようである。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、ほぼ互角と言って良いだろう。上場企業の社長輩出率、役員輩出率ともほとんど似ている。「学閥」という観点で考えた場合においては、どちらが有利・不利とはならないほどの差である。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値
単位
数値年度関西大学
システム
理工学部
関西学院大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015682,253639,494
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152428

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、関西学院大がやや勝っており、改革で先行しているイメージがある。しかしその差はわずかであり、ほぼ互角と言っていいかもしれない。

<まとめ>
 以上、関西大システム理工学部と関西学院大理工学部を比較してみてきた。全体としては、ほぼ互角といえる。だが、強いて優劣をつけるのであれば、関西学院大理工学部が僅かばかり優位の印象を受ける。キャンパスライフ面では差はないが、入試難易度あたりにやや差が見られる。なお、実際に双方の学部に合格した人の選択を見てみてみると、関西大システム理工学部に進学した人が47%、関西学院大理工学部に進学した人が53%(サンデー毎日2014年7月20日号より)というほぼ互角の結果が出ている。これだけの僅差であれば、是非、両大学のキャンパスの見学をしたうえで決めてもらえればと思う。
 そして最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。