2017年11月28日火曜日

関関同立対決:同志社大経済学部VS立命館大経済学部

 関関同立の中でも、京都の大学同士で比べられることの多い、同志社大と立命館大。今回は両校の「経済学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。
(一般的な評価は「同志社大が優勢」という評価のようだが、果たしてその評価が正しいのか検証していく)。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。

 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値
単位
数値年度同志社大学
経済学部
立命館大学
経済学部
学部の学生数(人)学部20152673332301
入試難易度(河合塾)学部201638653321
入試難易度(駿台)学部201657.555
入試難易度(ベネッセ)学部20165855
入学者数(人)学部20167167
競争入試での入学者(人)学部2016901847
競争入試の割合(%)学部2016570543
入試方式の数(競争入試)学部201563.30%64.10%
現役入学者の比率(%)学部201678.978

 入試難易度は3社とも同志社大経済学部が上の数値を出している。「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、同志社大経済学部に軍配が上がる。ただ、差としてはさほど大きな差ではない。
 なお、「競争入試の割合」は立命館大経済学部がやや高いが、誤差の範囲であり、いわゆる偏差値操作の可能性については考慮には入れなくて良いだろう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もあることから、本ブログでは、「競争入試の割合」を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値
単位
数値年度同志社大学
経済学部
立命館大学
経済学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015416440
学生還元率(%)大学201540.40%45.30%
奨学費(円)大学201517412103434964183930
学生一人当たりの奨学費(円)大学201565,133153,685
卒業率(%)学部201479.773.9
最寄駅の平均家賃(万円)20164~4.53.5~4

 4年間でかかる学費については、立命館大経済学部が24万円ほど高い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 ただし、学生還元率や一人当たりの奨学費は立命館大が多く、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、立命館大に軍配が上がる(医学部を持たない大手私立大の中では、立命館大がトップレベルの学生還元率、一人当たりの奨学費を誇っており、学生視点の大学運営として評価できる)。
 キャンパス周辺の家賃を比較してみると、大きな差はないが、コスト的には立命館大の方が割安となることが予想される。
 一方で、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、同志社大の方が6%ほど低い。僅差とは言えない数値であり、判断材料として参考になるだろう。
 上記を総合すると、コスト面では、やや同志社大経済学部が優勢といえるだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値
単位
数値年度同志社大学
経済学部
立命館大学
経済学部
キャンパス学部2016今出川【都市型】びわこ・くさつ
【郊外型】
1年以内退学率(%)学部20141.01.3
4年間退学率(%)学部20142.84.9
入学者の地元占有率(%)学部2016188.5
女子入学者の割合(%)学部201630.624.8
大学全体の女子学生数(人)大学20161134911928
大学全体の男子学生数(人)大学20161570420652
大学全体の女子学生比率(%)大学201642.00%36.60%
女性ファッション誌
登場人数(人)
大学2011197
受入留学生数(人)学部20155556
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.40%1.70%
長期留学派遣学生数(人)大学2015233250
長期留学派遣の割合(%)大学20153.50%3.10%
ST比(人)学部20156953.6
専任教員数(人)学部20155662
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.916.6

<キャンパスの立地>
 同志社大経済学部は京都市内の地下鉄今出川駅から徒歩1分の「今出川キャンパス」で4年間を過ごす。歓楽街などはキャンパスから少し離れた場所まで繰り出すことになるが、特に不便はないだろう。関西の大学の中では、文句なしの「都市型キャンパス」といってよいだろう。
 一方の立命館大経済学部は、京都ではなく滋賀県にある「びわこ・くさつキャンパス」で4年間を過ごす。JR東海道線南草津駅からバスで10分の場所である。郊外型キャンパスではあるが、電車の便はさほど悪くはない(京都駅からの所要時間は40分とさほど長くない)。このキャンパスの魅力はその広さであり、甲子園球場の15倍程度といわれており、のびのびと学生生活が送れそうなキャンパスである。
 キャンパスの立地については、単純な交通の便で言えば同志社大経済学部が優位とえよう。しかし、先述の通り立命館大のびわこ・くさつキャンパスはとても広く、のびのび学習できる環境も悪くはないだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、同志社大経済学部の方が低い結果となっている。ただし、立命館大経済学部も高い数値とはいえない。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、立命館大が8位(65ポイント)、同志社大はランク外(24ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、立命館大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、同志社大経済学部の女子学生比率が5%ほど高い。ただ、5%程度の差ならば大きな差とは言えないだろう。
 外国人留学生の割合については、立命館大経済学部が勝っているが、ほとんど差はない。「立命館の学習環境が国際的である」と言えるほどの差ではないだろう。
 上記を総合すると、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、ほぼ互角か。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、同志社大に軍配が上がる。しかし、その差は大きくはなく、立命館が劣っているとも言えない状況である。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、注目したい数値であるが、この差であれば判断材料にはならないだろう。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、同志社大経済学部の数値がとても高く、これはマイナスポイントであるだろう。立命館大経済学部も低くはないが、立命館大経済学部の方が「少人数教育」の環境が整っているといえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、立命館大の方が勝っている。この数値は、落ち着いた環境で勉強できるキャンパスの特性などが影響しているのかもしれない。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、同志社大が18人、立命館大が20人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、同志社大が9人、立命館大が12人であり、高校側の印象では、互角といったところか。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、同志社大は16位(37ポイント)、立命館大は28位(17ポイント)となっている。こちらでは、同志社大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや同志社大経済学部が優位という印象である。大きな判断材料は、やはりキャンパスの立地になるだろうか。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値
単位
数値年度同志社大学
経済学部
立命館大学
経済学部
主要企業400社への就職率(%)大学201632.523.5
卒業生数(人)学部2015890774
進学者数(人)学部20151918
進学率(%)学部20152.10%2.30%
公務員就職者数(人)学部20155873
公務員就職比率(%)学部20156.50%9.40%
警察官就職者数(人)大学20151951
国家公務員総合職(人)大学20152628
CA採用数(人)大学20141122
国会議員の数(人)大学201538
上場企業の社長数(人)学部2006196
社長の数(人)大学201555613754
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.210.12
上場企業の役員数(人)学部200611455
上場企業の役員数(人)大学2015472275
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0180.009

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、同志社大が10%程度高い数字が出ている。これはかなりの差と言えるし、経済学部であれば、実態はこの数字より高い就職率を誇ると考えられるため、同志社大経済学部を選ぶ理由となりうるほどのインパクトのある数字である(立命館も決して低い数値ではないが、同志社の数値がとても優れている)。

<公認会計士になりたい>
 経済学部を選ぶのであれば、難関資格である公認会計士を目指す人もいるかもしれない。両大学とも毎年30~50名程度の合格者を輩出しており、大きな差はないと考えてよいだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、立命館大経済学部の方が高い数字が出ており、この数字はかなり高いと言っていいだろう。これだけ公務員就職比率が高ければ、公務員志望者が「積極的に」立命館大経済学部を選ぶ理由にもなりうる。
 そのほか、警察官になりたい場合も、実績の面でいえば立命館大の方がいいかもしれない。

<主要な就職先の比較>

同志社大学
経済学部
立命館大学
経済学部
三井住友銀行NTTコミニケーションズ
三菱東京UFJ銀行神戸製鋼所
日本生命保険全日本空輸
京都銀行豊田通商
みずほフィナンシャルグループ阪急阪神百貨店
東京海上日動火災保険阪神電気鉄道
国家公務員みずほフィナンシャルグループ
りそなグループ三井住友銀行
南都銀行三菱東京UFJ銀行
損害保険ジャパン日本興亜ユニチャーム
※同志社大のデータは文系学部全体のデータ

 主要就職先については、同志社大の就職先リストは「文系学部全体」のデータとなっており、学部単体での比較ではないのでご留意いただきたい。
 立命館大経済学部は学部単独のデータであるが、関西を地盤とする有名企業が多く入っているのが特徴的である。両者とも就職実績は良好といえよう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、同志社大経済学部に軍配が上がる。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。そういう意味で、「上場企業の役員になりやすさ」等は同志社大経済学部の方が明らかに高く、もし出世を期待するのであれば同志社大学経済学部の方が少しは有利かもしれない。もちろん、企業によって事情は異なるし、立命館大経済学部だからといって不利になることはないだろうが、あくまでも「少しは」といった程度である。

<上位校との差について>
 両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大・京大・一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH・関関同立出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値
単位
数値年度同志社大学
経済学部
立命館大学
経済学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015583,2801,066,855
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152233

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、立命館大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。
 なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、同志社大が17位(21ポイント)、立命館大は1位(259ポイント)であり、高校現場の印象でも、立命館大の改革イメージの強さが際立っている。

<まとめ>
 以上、同志社大経済学部と立命館大経済学部を比較してみてきた。全体としては、やはり同志社大経済学部が優位であると言える。特に、大企業への就職実績において差がみられる。なお、実際に双方の学部に合格した人の選択を見てみてみると、同志社大経済学部に進学した人が99%、立命館大経済学部に進学した人が1%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という圧倒的な結果が出ている。しかし、立命館大経済学部が勝っている部分も少なくなく、何よりも立命館大の「改革」のスピードはすさまじく、将来的にこの序列がどうなるか注目されるところである。