今回はいわゆる「産近甲龍」の中のライバル校同士である龍谷大経営学部と近畿大経営学部について比較していきたい。
また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。
「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 龍谷大学 経営学部 | 近畿大学 経営学部 |
大学全体の学部生数(人) | 大学 | 2015 | 17524 | 31586 |
学部の学生数(人) | 学部 | 2015 | 2118 | 5496 |
入試難易度(河合塾) | 学部 | 2016 | 50 | 55 |
入試難易度(駿台) | 学部 | 2016 | 48 | 46 |
入試難易度(ベネッセ) | 学部 | 2016 | 61 | 61 |
入学者数(人) | 学部 | 2016 | 504 | 1318 |
競争入試での入学者(人) | 学部 | 2016 | 248 | 597 |
競争入試の割合(%) | 学部 | 2016 | 49.20% | 45.30% |
現役入学者の比率(%) | 学部 | 2016 | 94.8 | 88.5 |
入試難易度は双方とも1勝1敗1分の数値となっている。予備校としては、ほぼ互角とみているようだ。
競争入試の割合についても、龍谷大経営学部が4%ほど高いものの、僅差であるため、予備校が出す難易度は額面通りに受け取っていいだろう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があるため、「競争入試の割合」を本ブログでは比較するようにしている。)
「費用対効果はどちらが高いか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 龍谷大学 経営学部 | 近畿大学 経営学部 |
4年間でかかる学費(万円) | 学部 | 2015 | 403 | 445 |
学生還元率(%) | 大学 | 2015 | 34.90% | 42%以下 |
奨学費(円) | 大学 | 2015 | 770,874,120 | 数値なし |
学生一人当たりの奨学費(円) | 大学 | 2015 | 43,990 | 数値なし |
卒業率(%) | 学部 | 2014 | 80.8 | 84 |
最寄駅の平均家賃(万円) | 2016 | 4~4.5 | 3~3.5 |
4年間でかかる学費については、龍谷大経営学部の方が42万円程度安い。ただし、学科・専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
なお、学生還元率や奨学費のデータについては、近畿大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。
龍谷大の学生還元率や奨学費は悪くない数字と言えるため、便宜上「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、龍谷大に軍配を上げておこう。
なお、一人暮らしをする場合には、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、京都の家賃が高いぶん、龍谷大の方がやや高い(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、4%ほど龍谷大経営学部が高いものの、大きな差ではない。ギリギリ気にするレベルではないだろう。
以上の通り、家賃面では近畿大に負けるものの、その他のコスト面では、全般的に龍谷大経営学部が勝っている。
「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 龍谷大学 経営学部 | 近畿大学 経営学部 |
キャンパス | 学部 | 2016 | 深草【都市型】 | 東大阪【中間型】 |
1年以内退学率(%) | 学部 | 2014 | 0.8 | 0.8 |
4年間退学率(%) | 学部 | 2014 | 7 | 6.5 |
入学者の地元占有率(%) | 学部 | 2016 | 24.8 | 50.8 |
女子入学者の割合(%) | 学部 | 2016 | 43.3 | 31.2 |
大学全体の女子学生数(人) | 大学 | 2016 | 7279 | 9752 |
大学全体の男子学生数(人) | 大学 | 2016 | 11954 | 22570 |
大学全体の女子学生比率(%) | 大学 | 2016 | 37.80% | 30.20% |
女性ファッション誌 登場人数(人) | 大学 | 2011 | 数値なし (2人以下) | 数値なし (2人以下) |
受入留学生数(人) | 学部 | 2015 | 13 | 103 |
留学生比率 (留学生数/全学生数) | 学部 | 2016 | 0.60% | 1.90% |
長期留学派遣学生数(人) | 大学 | 2015 | 77 | 10 |
長期留学派遣の割合(%) | 大学 | 2015 | 1.80% | 0.10% |
ST比(人) | 学部 | 2015 | 48.1 | 57.3 |
専任教員数(人) | 学部 | 2015 | 44 | 96 |
一人当たり貸出冊数(冊) | 大学 | 2015 | 10.8 | 8.6 |
<キャンパスの立地>
龍谷大経営学部は、京都駅から程近い、京阪電鉄深草駅・JR稲荷駅・地下鉄くいな橋駅の3駅利用可のアクセル良好な「深草キャンパス」で4年間を過ごす。アクセス面では都市型キャンパスといえるが、周囲の環境は静かな環境で、学生生活を送るのには悪くない環境である。周囲のお店の数は多いとは言えないが、少ないわけではない。京都市内の大規模大学のキャンパスとしては、上位レベルの利便性・環境の良さと言えるだろう。
一方の近畿大経営学部は、大阪のターミナル駅なんば駅から近鉄電車で20分の長瀬駅から徒歩10分の「本部キャンパス」で4年間を過ごす。都会ではないが、周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。緑も豊富ながらも利便性も悪くない、バランスの取れたキャンパスと言えるだろう。
キャンパスについては京都と大阪で単純比較はできないが、アクセスなど利便性などにおいては龍谷大経営学部に軍配が上がる。近畿大のキャンパスも悪くはないが、龍谷大深草キャンパスの京都駅からの近さは魅力的である。
<ドロップアウトリスク>
続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、双方の数値ともほとんど違いが見られない。したがって互角と考えてよいだろう。
<学生の属性>
学生の属性を比較していくと、学部単位の女子学生比率については、龍谷大経営学部が12%ほど高い。大学全体の女子学生比率も龍谷大が8%ほど高いため、キャンパス内の華やかさの意味では、やや龍谷大が勝っているといえる。
また、外国人留学生の比率については、近畿大経営学部が多く、教室内の国際性という意味では、近畿大経営学部が優れているといえる。
<教育面>
教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学派遣率が高い龍谷大が優勢だ。かなりの差が開いている。
先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、留学している比率の高い方へ行くというのも一つの手だろう。
また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、龍谷大経営学部が少なく、より「少人数教育」の環境もより整っているといえる。
なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、龍谷大の方が多い。しかし、差は大きくはない。
また、大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大は21位(24ポイント)、龍谷大はランク外(53位以下)となっている。
上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、龍谷大経営学部が優位の印象を受ける。
「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 龍谷大学 経営学部 | 近畿大学 経営学部 |
主要企業400社への就職率(%) | 大学 | 2016 | 10%以下 | 10%以下 |
卒業生数(人) | 学部 | 2015 | 455 | 1233 |
進学者数(人) | 学部 | 2015 | 3 | 14 |
進学率(%) | 学部 | 2015 | 0.70% | 1.10% |
公務員就職者数(人) | 学部 | 2015 | 16 | 32 |
公務員就職比率(%) | 学部 | 2015 | 3.50% | 2.60% |
警察官就職者数(人) | 大学 | 2015 | 52 | 95 |
国家公務員総合職(人) | 大学 | 2015 | 数値なし (1人以下) | 2 |
CA採用数(人) | 大学 | 2014 | 数値なし (8人以下) | 数値なし (8人以下) |
国会議員の数(人) | 大学 | 2015 | 2 | 2 |
上場企業の社長数(人) | 学部 | 2006 | 数値なし (5人以下) | 数値なし (5人以下) |
社長の数(人) | 大学 | 2015 | 1107 | 6243 |
社長になりやすさ (社長の数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.06 | 0.2 |
上場企業の役員数(人) | 学部 | 2006 | 数値なし (46人以下) | 数値なし (46人以下) |
上場企業の役員数(人) | 大学 | 2015 | 63 | 139 |
上場企業の役員になりやすさ (上場企業役員数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.004 | 0.004 |
<公務員になりたい>
学部単体の公務員就職比率は、龍谷大経営学部がやや高い。公務員就職を目指す場合は、龍谷大経営学部がやや有利だろうか。
なお、「警察官」の就職実績は近畿大の方が多く、警察官就職率は近畿大の方が高いだろう。そのあたりは参考にしたい。
<主要な就職先の比較>
龍谷大学 経営学部 | 近畿大学 経営学部 |
京都中央信用金庫 | 紀陽銀行 |
りそな銀行 | 大和ハウス工業 |
京都銀行 | みずほフィナンシャルグループ |
みずほフィナンシャルグループ | 大阪府警察 |
三菱東京UFJ銀行 | りそな銀行 |
コクヨ | 西日本旅客鉄道 |
三井住友銀行 | 三井住友銀行 |
京セラ | 新日鉄住金 |
月桂冠 | 全日本空輸 |
国税庁 | 日本放送協会 |
主要就職先についてみてみると、どちらも金融機関が多いものの、経済学部などと比べると、多様な業種が並んでいる。どちらも有名・人気企業が並んでおり、優劣はつけられない。
<出世した先輩の多さ>
先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、大学の規模を加味すればほぼ互角といえる。上場企業の社長数、役員数ともにそれなりの数を輩出している。ただ、「学閥」といえるほどは輩出していないため、そのあたりは期待できないだろう。また、近畿大は、何よりも卒業生数の多さが強みであり、大企業から中小企業まであらゆる企業に卒業生がいることはメリットになるだろう。
<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 龍谷大学 経営学部 | 近畿大学 経営学部 |
国からの特別補助金支給額 (千円) | 大学 | 2015 | 206,445 | 495,208 |
学生一人当たり 特別補助金支給額(千円) | 大学 | 2015 | 12 | 16 |
大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
この数値を比較すると、近畿大が勝っており、改革でやや先行しているイメージがある。
また、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大が1位(296ポイント)、龍谷大はランク外(21位以下)となっており、高校現場の印象でも、近畿大が改革のイメージが強いようである。
<まとめ>
以上、龍谷大経営学部と近畿大経営学部を比較してみてきた。全体としては、やや龍谷大経営学部が優勢な印象を受ける。最近は近畿大の志願者数が日本一になるなど、勢いのある近畿大であるが、その一方で細かい点に目を向けて進学先を選んでいただければと思う(近畿大が悪い大学と言っているわけではないので、悪しからず)。特に、最終的な判断については、是非、両大学のキャンパスの見学をしたうえで決めてもらえればと思う。近畿地方以外から進学する場合は、なおさら足を運んでみることを強くお勧めしたい。