2017年6月14日水曜日

MARCH対決:中央大法学部VS明治大法学部

 今回の比較対象は、MARCHというくくりができるはるか以前より、100年以上にわたってライバルとして競ってきた中央大と明治大。その中で、中央大法学部と明治大法学部に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。

 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。

「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度中央大学
法学部
明治大学
法学部
大学全体の学部生数(人)大学20152508030538
学部の学生数(人)学部201561583697
入試難易度(河合塾)学部201662.560
入試難易度(駿台)学部20166358
入試難易度(ベネッセ)学部20167973
入学者数(人)学部20161523961
競争入試での入学者(人)学部2016728715
競争入試の割合(%)学部201647.80%74.40%
入試方式の数(競争入試)学部201575
現役入学者の比率(%)学部201681.580.3

 入試難易度は3社とも、中央大法学部が上の数値を出している。すべて僅差ではあるものの、これだけ明確な結果であれば、偏差値的には中央大法学部が上であると判断できる。
 なお、「競争入試の割合」は明治大法学部の方が有意に高いが、入学定員は中央大法学部が圧倒的に多い。したがってプラスマイナスゼロで、予備校の難易度は額面通りに受け取っていいだろう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。また、募集定員が多い方が偏差値が下がってしまう傾向にあるため、本ブログでは、「競争入試の割合」と「募集定員」を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度中央大学
法学部
明治大学
法学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015421426
学生還元率(%)大学201535.70%52.90%
奨学費(円)大学20151,245,994,9771,382,901,203
学生一人当たりの奨学費(円)大学20154968145285
卒業率(%)学部201486.287.3
最寄駅の平均家賃(万円)20164.5~5和泉5.5~6、
駿河台8.5~9

 4年間でかかる学費については、中央大法学部が5万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 学生還元率は明治大が高く、一人当たりの奨学費については中央大が多いことから、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、ほとんど互角か、明治大がわずかに勝っている印象を受ける。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、コスト的には中央大の方がかなり割安となることが予想される。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほとんど同値であり、判断材料にはならないだろう。
 上記を総合すると、コスト面では、互角といえる。ただし、地方出身者で「大学の徒歩圏内に住みたい」というのであれば、中央大法学部を選ぶ方がコストは安くなるだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
法学部
明治大学
法学部
キャンパス学部2016多摩【郊外型】和泉(1~2年)
【中間型】、
駿河台(3~4年)
【都市型】
1年以内退学率(%)学部20141.31.7
4年間退学率(%)学部20143.11.8
入学者の地元占有率(%)学部201633.334.6
大学全体の首都圏出身比率(%)大学201556.163.9
女子入学者の割合(%)学部201642.233.3
大学全体の女子学生数(人)大学2016906410545
大学全体の男子学生数(人)大学20161575720289
大学全体の女子学生比率(%)大学201636.50%34.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20112385
受入留学生数(人)学部2015935
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.10%0.90%
長期留学派遣学生数(人)大学20158586
長期留学派遣の割合(%)大学20151.40%1.10%
ST比(人)学部201556.543.5
専任教員数(人)学部201510985
一人当たり貸出冊数(冊)大学20154.89.6

<キャンパスの立地>
 中央大法学部は、東京都八王子市の多摩キャンパスで4年間を過ごすことになり、いわゆる典型的な「郊外型キャンパス」である。広々とした環境で4年間を過ごせるが「都会に出たい」といって上京する学生にとってはやや、物足りないと思うかもしれない。
 一方で、明治大法学部は1、2年と3、4年でキャンパスが変わる。1、2年次の和泉キャンパスは新宿から京王線特急で1駅と交通の便は良く、学生街として環境は整っている。3年次以降の駿河台は都心部にあるものの、昔ながらの神田学生街の中心となっており、こちらも不便はないといえる。難点を言えば、キャンパスが手狭であり窮屈な印象があることか。
 簡単に言えば、「遊びたい学生」は明治大を選んだ方がよい。しかし、逆に「都会の誘惑に惑わされたくない」と殊勝なことを考える人にとっては、中央大は捨てがたい。郊外型のキャンパスは、「大学生として勉強する環境」に恵まれているのは間違いなく、安価でキャンパスの徒歩圏内に一人暮らしもできる(通学時間が節約できる分、やりたいことができるという考え方もある)。
 キャンパスの立地については、利便性や他大学の学生との交流など一般的な価値観では明治大が勝るのは間違いない。しかし、大学4年間で明確な目標(公務員試験やロースクール入試に合格する等)がある人にとっては、中央大のキャンパスの立地も悪くはないかもしれない。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、明治大法学部の方がやや低い。ただし、中央大法学部の場合は仮面浪人の数が多いと推測されるため、実質的なドロップアウト率はほとんど変わらないと思われる。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、中央大が20位(29ポイント)、明治大が4位(117ポイント)となっており、高校教育の現場においては、明治大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、中央大法学部の女子学生比率が10%ほど高いのがわかる。教室内の雰囲気の華やかさは中央大法学部が上であろう。しかし、大学全体としての女子学生比率はさほど変わらないため、キャンパスの雰囲気が変わるような大差はないだろう。
 また、中央大は、地方出身者が明治大と比べて多い特徴があり、より全国から学生が集っている事実がデータとして表れている。大学全体の首都圏出身比率は8%程度差があるため、思ったよりは大きな差かもしれない。地方出身者にとっては、中央大の方が同郷の仲間がいる可能性が高く、学生の輪に溶け込みやすい可能性はある。
 なお、留学生比率については、明治大法学部の方が多く、国際色豊かな教育環境という意味では、明治大法学部が優れているといえる。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合は中央大に軍配が上がる。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、一つの判断材料にはなりうる。
 一方で、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、明治大の方が低い。「少人数教育」の環境は、明治大法学部が勝っていると考えていいだろう。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、明治大の勝ちである。この数字についても、中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントであるだろう。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、中央大が19人、明治大が26人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、中央大が10人、明治大が19人であり、高校側の印象では、ほぼ互角といったところか。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、中央大は28位(17ポイント)、明治大は6位(86ポイント)となっている。こちらでは、明治大が優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、キャンパス面では明治大優位だが、それ以外は中央大が優位の印象を受ける。トータルでは互角に近いといえるのではないだろうか。なお、公務員試験やロースクール進学などを目標に定めている人などは、静かな学習環境が整っている中央大法学部がいいだろう。
 

「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
法学部
明治大学
法学部
主要企業400社への就職率(%)大学201623.326.7
卒業生数(人)学部20151446861
進学者数(人)学部201521360
進学率(%)学部201514.70%7.00%
公務員就職者数(人)学部2015254137
公務員就職比率(%)学部201517.60%15.90%
警察官就職者数(人)大学20152836
国家公務員総合職(人)大学20154825
CA採用数(人)大学20141311
国会議員の数(人)大学20153116
上場企業の社長数(人)学部200623数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201585349580
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.340.31
上場企業の役員数(人)学部200618654
上場企業の役員数(人)大学2015969650
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0390.021

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、明治大がやや高い。ただし、中央大の看板学部である法学部に限って言えば、その差は逆転していることが推測される。学部ごとの数値は持ち合わせていないため、あくまでも主観であるが、大企業の就職においては中央大法学部がやや優位ではないかと思われる。

<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
 法学部を選ぶのであれば、弁護士などの法曹になりたい人も多いと思うが、もし法曹として進路を希望するのであれば、中央大法学部の方が良い。
 法科大学院(ロースクール)が設立されて以後、大学別の司法試験合格者ランキングは当然のように「大学院」の数字となっており、学部レベルでのランク付けは難しくなっているのが現状であるが、「法科の中央」と呼ばれるだけあって、その実績は他の大学を寄せ付けないほどの強さである。この伝統は司法試験勉強においてはかなり有利になると考えてよい。
 実際に進学率も中央大法学部の方が明らかに高く、その大半はロースクールに進学していると考えられるため、勉強仲間の存在など環境面でも中央大が勝っているといっていいだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、中央大法学部が高い。大差ではないが、公務員就職希望者にとってはかなり心強い数値である。
 なお、キャリア官僚職「国家公務員総合職」にチャレンジする場合も、中央大の方がいいかもしれない。官僚OBの数の違いもあれば、官僚を目指す仲間の存在も大きいからだ。

<主要な就職先の比較>

中央大学
法学部
明治大学
法学部
東京都庁国家公務員
みずほフィナンシャルグループ東京都特別区
りそなホールディングスみずほフィナンシャルグループ
三井住友銀行三菱東京UFJ銀行
国税庁SMBC日興証券
三菱東京UFJ銀行東京都庁
ワークスアプリケーションズ三井住友銀行
損害保険ジャパン日本興亜りそなグループ
埼玉県庁警視庁
東京都八王子市役所国税庁(国税専門管)

 主要就職先は、中央大法学部と明治大法学部の上位はどちらも官公庁やメガバンクなどが多い。この一覧からは、大きな差は見られない。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、中央大法学部が優位と言えるだろう。学部単位、大学単位の両面において、中央大が勝っている。中央大法学部は日本を代表する名門学部として「学閥」のメリットを期待できるだろう。

<上位校との差について>
 双方の大学とも就職実績については良好といえる。しかし一方で、「早慶」との学歴フィルターの差の存在も忘れてはいけない。エントリー段階では公平であっても、いざ採用実績となるとMARCHがほとんど入っていないケースが、総合商社などに見られる。そういった企業を目指すのであれば、一浪してでも早慶などにチャレンジした方がいいという判断もありうる。
 また、両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度中央大学
法学部
明治大学
法学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015596,960738,498
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152424

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額であるが、学生数一人当たりの額は互角という結果となっている。
 ただし、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、中央大が50位(17ポイント)、明治大が3位(133ポイント)と、高校現場の印象では、明治大が勝っているといえよう。

<まとめ>
 以上、中央大法学部と明治大法学部を比較してみてきたが、全体の印象としては、中央大法学部の方が優位と感じられる。実際に両方に合格した人の選択を見てみても、中央大法学部に進学した人が86%、明治大法学部に進学した人が14%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。