2017年3月3日金曜日

日東駒専対決:東洋大法学部VS日本大法学部

 関東の大手大学のうち、いわゆる「日東駒専」の中で永らくライバルとされてきた東洋大学と日本大学。今回は両校の「法学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。

※日本大学法学部においては、「昼間部」と「夜間部」に分かれており、「昼間部」のデータのみで切り分けられるデータについては、「昼間部」のデータを掲げています。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度東洋大学
法学部
日本大学
法学部
大学全体の学部生数(人)大学20152621167251
学部の学生数(人)学部201524026709
入試難易度(河合塾)学部201652.552.5
入試難易度(駿台)学部20164953
入試難易度(ベネッセ)学部20166163
入学者数(人)学部20167131635
競争入試での入学者(人)学部2016436825
競争入試の割合(%)学部201661.20%50.50%
現役入学者の比率(%)学部201686.00%84.8

 入試難易度は日本大法学部の2勝1分けという結果となっている。河合塾は同値であるものの、「ベネッセ」と「駿台」は日本大法学部の方が上の数値を出しいる。また、「競争入試の割合」については、東洋大法学部の方が10%ほど高いため、偏差値としては東洋大の方が低めに出る傾向はある。しかし一方で日本大学法学部の募集定員(1学年の数)は膨大であることから、偏差値のバイアスでは、、プラスマイナスゼロとなるだろう。したがって、日本大学が僅かばかり上か、というところであろうか。
 (一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。また、募集定員が多い方が偏差値が下がってしまう傾向にあるため、本ブログでは、「競争入試の割合」と「募集定員」を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度東洋大学
法学部
日本大学
法学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015389394
学生還元率(%)大学201528.60%61%以下
奨学費(円)大学2015722,379,911数値なし
学生一人当たりの奨学費(円)大学201527,560数値なし
卒業率(%)学部201484.484.7
最寄駅の平均家賃(万円)20166.5~79~9.5

 4年間でかかる学費については、東洋大法学部が5万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 なお、学生還元率や奨学費のデータについては、日本大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。
 したがって、比較はできないものの東洋大のデータを評価すると、MARCHクラスの大学と比べると見劣りするものの、学生還元率・奨学費とも低い数値ではなく、一般的な数値といえるだろう。
 キャンパス周辺の家賃を比較してみると、コスト的には東洋大の方が割安となることが予想される (両大学の場合、徒歩圏内に住むケースは多くはないであろうが、大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 一方で、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほとんど差はないため誤差の範囲内で、数値としても一般的なものである。
 (言うまでもなく、留年した場合には余計に学費がかかる)
 以上を総合すると、コスト面では、東洋大に軍配が上がる。ただ、それほど大きな差があるわけではない。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度東洋大学
法学部
日本大学
法学部
学部2016白山【都市型】水道橋【都市型】
1年以内退学率(%)学部20141.71.2
4年間退学率(%)学部20147.55.6
入学者の地元占有率(%)学部201623.70%28.8
女子入学者の割合(%)学部201632.00%34.3
大学全体の女子学生数(人)大学20161233821427
大学全体の男子学生数(人)大学20161751446482
大学全体の女子学生比率(%)大学201641.30%31.60%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011997
受入留学生数(人)学部2015756
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.30%0.80%
長期留学派遣学生数(人)大学201593134
長期留学派遣の割合(%)大学20151.40%0.80%
ST比(人)学部201545.350.8
専任教員数(人)学部201553132
一人当たり貸出冊数(冊)大学20157.24.7

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。東洋大法学部は文京区の白山駅から徒歩5分の「白山キャンパス」で4年間を過ごす。都心部に近いながら、周囲は比較的静かな環境で、周囲のお店もさほど多くはないが、地下鉄を使えばどこに行くのも便利である。やや狭いのが気になるが、都市型キャンパスで静かな環境を維持しているという意味では、キャンパス環境としてはかなり恵まれているといえる。
 一方の日本大法学部は、神保町や水道橋駅から徒歩5分程度のアクセス良好な都心部で4年間を過ごす。日本大学は学部によってキャンパスがバラバラであるが、この法学部はその中でも特に便利なキャンパスとなっている。しかし、オフィス街の中に建物が混在して建っているという感じであり、他の大規模大学のようにキャンパスの門をくぐると「大学の自由な空間が広がっている」というような感覚は得られない(実際に訪れてみないと感覚が分からないだろうが…)。とはいうものの、田舎ではなく都市部で大学生活を過ごしたい人にとっては悪くないキャンパスかと思われる。
 その上で、両者のキャンパスについて比較すると、東洋大法学部が優位とえよう。アクセス面では日本大法学部が勝っているが、そのほかの面では東洋大白山キャンパスの環境が恵まれているように感じる。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、東洋大法学部の数値がやや高めに出ており、日本大法学部に軍配が上がる。
 なお、大学通信社による2014年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、日本大が36位(19ポイント)、東洋大はランク外(14ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、日本大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。つまり、退学率のデータと合致しているということになる。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、学部単位の女子学生比率は日本大法学部が高いが、大学全体で考えると東洋大の女子学生比率は40%を超えているため、優劣はつけられない。
 一方で地元占有率は東洋大が低いと出ている。
 また、外国人留学生の割合については、日本大法学部が勝っているため、日本大法学部の学習環境がやや国際的であると言えるかもしれない。
 しかし、全般的に「学生の多様性」を享受できるのは、東洋大であると言えそうだ。というのも、先述の通り、日本大は学部ごとのキャンパスとなっており、他学部学生との交流が少なくなるためだ。東洋大では多くの学部が白山キャンパスで学んでおり、学部外の人との交流もそれなりに活発である。したがって、多様な価値観に触れるという意味では、東洋大がやや有利であろう。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、東洋大に軍配が上がる。東洋大は「スーパーグローバル大学」として採択されており、今後も国際化が進んでいくことが予想される。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、東洋大が有利だろう。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、こちらも東洋大法学部が勝っている。しかし大差はないため、両者の比較において「少人数教育」の環境が「より整っている」というくらいのものであろう。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、東洋大の方が勝っている。日本大の場合、学生数が膨大であるため低く出る可能性はあるが、恐らく一番の理由はキャンパスが点在しており、大きな図書館を整備できないことがあるような気がする(あくまでも推測であるが…)。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、東洋大が優勢という印象である。日大が劣っているというわけではないが、こうして比較してみると、東洋大の勢いを感じる。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度東洋大学
法学部
日本大学
法学部
主要企業400社への就職率(%)大学201610%以下10%以下
卒業生数(人)学部20156121494
進学者数(人)学部20151424
進学率(%)学部20152.30%1.60%
公務員就職者数(人)学部201561155
公務員就職比率(%)学部201510.00%10.40%
警察官就職者数(人)大学201561172
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし(1人以下)3
CA採用数(人)大学2014数値なし(8人以下)11
国会議員の数(人)大学2015329
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学20152,868.00022,582.000
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.110.34
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)60
上場企業の役員数(人)大学201586610
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0030.009

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、ほとんど変わらない。双方とも良好な数値である。
 公務員を志望する人が選ぶ大学としては、両者とも悪くない選択になるだろう。

<主要な就職先の比較>

東洋大学
法学部
日本大学
法学部
みずほフィナンシャルグループ積水ハウス
京葉銀行東日本電信電話
東日本旅客鉄道みずほフィナンシャルグループ
大東建託三井住友銀行
積水ハウス三菱東京UFJ銀行
第一生命保険野村証券
東京地下鉄東京海上日動火災保険
ヤマト運輸総務省
花王カスタマーマーケティング財務省
キヤノンシステムアンドサポート東京都庁

 主要就職先を比べてみると、東洋大法学部の方が多様な業種に進んでいる。一方で日本大学法学部は、大手金融機関が多く、いわゆるMARCHクラスの法学部と変わらない顔ぶれとなっている。
 あくまでも、感覚的なものであるが、就職先実績を見る限りは、日本大学法学部の方が就職実績が勝っているような印象を受ける。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、東洋大法学部と日本大法学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由で日本大法学部を選ぶ判断材料にはなりえないだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、日本大法学部に軍配が上がる。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。特に、日本大学は日本最大の大学であり、全国にOB・OGが存在し、大企業であればほぼすべての企業に卒業生がいるとも言われている。この事実は強みになるだろう。もちろん、企業によって事情は異なるし、東洋大法学部だからといって不利になることはないだろうから、あくまでも両者を比較した場合の話である。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度東洋大学
法学部
日本大学
法学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015413,5531,479,950
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151622

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、日本大が勝っており、改革で先行しているイメージがあるが、一方で日本大の方が学部構成が多様であるため、この数字が高めにでる可能性はある。また、先述のように、東洋大は「スーパーグローバル大学」として採択されているため、今後、この数値が伸びていくことも予想される。
 なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、東洋大が7位(79ポイント)、日本大は19位(20ポイント)であり、高校現場の印象では、東洋大の改革イメージが強いようである。

<まとめ>
 以上、東洋大法学部と日本大法学部を比較してみてきた。はっきりとした優劣はつけにくいが、入学時の学力は日本大、キャンパスライフは東洋大、就職実績は日本大がそれぞれ優位と考えると、全体的には、少しだけ日本大法学部が優位であると言えよう。
 なお、実際に双方の学部に合格した人の選択を見てみてみると、東洋大法学部に進学した人が20%、日本大法学部に進学した人が80%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。しかし、東洋大法学部が勝っている部分も少なくなく、何よりも東洋大の「改革」の動きは目を見張るものがあり、将来的にこの序列がどうなるか注目されるところである。