2017年3月12日日曜日

MARCH対決:青山学院大理工学部VS法政大理工学部

 MARCHの中のライバル校として知られる、青山学院大と法政大。今回は両校の「理工学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
法政大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20151760127110
学部の学生数(人)学部201526952309
入試難易度(河合塾)学部201657.555
入試難易度(駿台)学部20165348
入試難易度(ベネッセ)学部20166464
入学者数(人)学部2016646549
競争入試での入学者(人)学部2016459405
競争入試の割合(%)学部201671.10%73.80%
入試方式の数(競争入試)学部201544
現役入学者の比率(%)学部201679.375

 入試難易度は「ベネッセ」の数値のみ互角だが、「河合塾」と「駿台」は青山学院大理工学部の方がやや上の数値を出している。
 「競争入試の割合」はほとんど同じであり、入試方式の数も同一であるため、予備校の難易度は額面通りに受け取っていいだろう。
(競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。その他、偏差値を下げないための方策として、入試方式を増やして、各入試方式の定員を小さくすることで見かけの偏差値を維持するという手法もある。そのため、本ブログでは競争入試の割合や入試方式の数などを比較することにしている)
 したがって、入学時の学力は青山学院大理工学部がやや上とみていいだろう。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
法政大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部20156391187
学生還元率(%)大学201531.80%38.00%
奨学費(円)大学2015385,868,990994,270,147
学生一人当たりの奨学費(円)大学20152192336675
卒業率(%)学部201476.883.6
最寄駅の平均家賃(万円)20164.0~4.54.5~5

 4年間でかかる学費については、法政大理工学部の数値が膨大なものとなっているが、学科や専攻によって学費が違うため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
 一方で、学生還元率や一人当たりの奨学費は法政大が勝っている。
 なお、一人暮らしをする場合、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、コスト的には青山学院大の方がやや割安となることが予想される。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、法政大理工学部の方が7%ほど低い。無視できない差であり、参考になる数値といえる。
 以上を総合すると、コスト面は学費次第ということになるだろう(要するに、入学する学科・専攻次第ということになる)。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
法政大学
理工学部
キャンパス学部2016相模原【郊外型】小金井【郊外型】
1年以内退学率(%)学部20140.90.9
4年間退学率(%)学部20145.64.3
入学者の地元占有率(%)学部201640.231.5
大学全体の首都圏出身比率(%)大学20156661.6
女子入学者の割合(%)学部201621.413.5
大学全体の女子学生数(人)大学2016870710509
大学全体の男子学生数(人)大学2016902718067
大学全体の女子学生比率(%)大学201649.10%36.80%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20112776
受入留学生数(人)学部20152825
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.00%1.10%
長期留学派遣学生数(人)大学20158472
長期留学派遣の割合(%)大学20151.90%1.10%
ST比(人)学部20152030
専任教員数(人)学部201513577
一人当たり貸出冊数(冊)大学20159.77.4

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。青山学院大理工学部は、文系とは異なり神奈川県相模原市のキャンパスで4年間を過ごすことになり、「郊外型キャンパス」である。学問分野からすると、遊ぶ暇はあまりないため、勉強する環境としては決して悪くない環境といえる。
 一方の法政大学理工学部は、JR中央線で新宿から25分の東小金井駅が最寄り駅で、徒歩15分の場所にキャンパスを構えている。交通の便はあまり良くないが、「田舎」というほどのキャンパスでもない。周りは住宅街であり、静かな学習環境である。
 キャンパスの立地については、どちらも郊外型であり、大きな差は見られないが、アクセスや利便性を考えると法政大小金井キャンパスに軍配が上がるだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、4年トータルでは法政大理工学部の方が低いことがわかる。ただし僅差であるため、判断材料にはならないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、青山学院大は27位(26ポイント)、法政大が18位(35ポイント)となっており、高校教育の現場においては、法政大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、女子学生比率については、青山学院大理工学部の方が8%ほど高い。
 留学生比率については、法政大理工学部の方が僅かに高いが、国際色豊かな教育環境という意味では、ほぼ互角といっていいだろう。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、青山学院大が優勢か。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、留学している比率の高い方へ行くというのも一つの手だろう。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されるため、あまり判断材料にはならないかもしれない。
 一方で、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、青山学院大理工学部の方が低い。少人数教育の環境は青山学院大理工学部の方が優位に立っている。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、やや青山学院大が優勢である。
 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、青山学院大が9人、法政大が6人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、青山学院大が9人、法政大が17人であり、高校側の印象では、青山学院大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ。
 その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、青山学院大は21位(24ポイント)、法政大は47位(11ポイント)となっており、同じように、青山学院大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや青山学院大が優勢のような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
法政大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201629.822.5
卒業生数(人)学部2015641488
進学者数(人)学部2015225129
進学率(%)学部201535.10%26.40%
公務員就職者数(人)学部2015105
公務員就職比率(%)学部20151.60%1.00%
警察官就職者数(人)大学20151657
国家公務員総合職(人)大学201546
CA採用数(人)大学20145020
国会議員の数(人)大学20151011
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201540256971
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.230.26
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)数値なし(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015233341
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0130.013

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、青山学院大の方が高い数字が出ている。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、青山学院大理工学部と法政大理工学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかを選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、青山学院大理工学部の方が高い。大学院進学面では青山学院大理工学部がやや優位に立っている。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、やや青山学院大理工学部が高い。ただし大きな差ではないため、公務員就職の観点では互角に近いとみていいだろう。

<主要な就職先の比較>

青山学院大学
理工学部
法政大学
理工学部
日本電気スズキ
アクセンチュアNECソリューションイノベータ
NECソリューションイノベーター日立システムズ
みずほフィナンシャルグループメイテックグループ
SCSKNECネッツエスアイ
東海旅客鉄道ソフトバンクグループ
富士通エフサスANAエアポートサービス
横浜銀行ANAウィングス
キヤノンバニラエア
東日本旅客鉄道東日本旅客鉄道

 主要就職先について、主観を交えていうなれば、青山学院大理工学部の就職実績の方が勝っている印象を受ける。学問分野の違いもあるだろうが、より人気企業が多いのは青山学院大理工学部のように感じる。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、ほとんど差はない。双方とも名門大学であり、上場企業の役員をそれなりに輩出しているが、「学閥」というほどではなく、「学閥」によるメリットはあまり期待できない、というのが実情だろう。

<上位校との差について>
 「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、青山学院大や法政大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、もう一つ上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
法政大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015505,391446,556
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152916

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較したいデータは、大学に国から支給される「特別補助金」の額であるが、この数値を比較すると、青山学院大が優勢である。
 別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、法政大が12位(54ポイント)、青山学院大が17位(30ポイント)と、法政大が勝っている。


<まとめ>
 以上、青山学院大理工学部と法政大理工学部を比較してみてきたが、全体的には青山学院大理工学部が優位の印象を受ける。実際に両方に合格した人の選択を見てみてみると、青山学院大理工学部に進学した人が97%、法政理工学部に進学した人が3%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。
 しかし、最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。