2017年2月5日日曜日

関関同立対決:関西大法学部VS関西学院大法学部

 今回は、「関関同立」の中のライバル校同士である関西大と関西学院大の「法学部」について比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度関西大学
法学部
関西学院大学
法学部
大学全体の学部生数(人)大学20152864223122
学部の学生数(人)学部201531502883
入試難易度(河合塾)学部201657.555
入試難易度(駿台)学部20165456
入試難易度(ベネッセ)学部20166870
入学者数(人)学部2016764711
競争入試での入学者(人)学部2016407385
競争入試の割合(%)学部201653.30%54.10%
現役入学者の比率(%)学部2016数値なし86.4

 入試難易度は関西学院大法学部の2勝1敗という結果となっている。河合塾の数字は関西大法学部が上であるものの、「ベネッセ」と「駿台」は関西学院大法学部の方が上の数値を出している。「競争入試の割合」や「定員」はほとんど変わらないため、「入学時点で優秀な学生を集めているかどうか」という観点では、関西学院大学法学部の方が僅かばかり上といえようか。
 (一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があるため、「競争入試の割合」を本ブログでは比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度関西大学
法学部
関西学院大学
法学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015406411
学生還元率(%)大学201540.20%35.10%
奨学費(円)大学20151501165119996236718
学生一人当たりの奨学費(円)大学20155241143086
卒業率(%)学部201480.466.8
最寄駅の平均家賃(万円)20163.5~44~4.5

 4年間でかかる学費については、関西大法学部の方が約5万円安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。年間1万程度であるため、ほとんど気にしなくて良いレベルだろう。
 とはいうものの、さらに比較データをみていくと、学生還元率や一人当たりの奨学費でも関西大が勝っており、コストパフォーマンスでは関西大が勝っているといえよう。
 加えて、一人暮らしをする場合には、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、関西大の方がさらに割安となることが予想される。また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、関西学院大法学部の方が14%ほど高いのも一つの判断材料にはなるだろう。
 (言うまでもなく、留年した場合には余計に学費がかかるが、15%の差は、他ではなかなか見られない差である)
 以上の通り、コスト面では、関西大法学部が明確に勝っているといえそうだ。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度関西大学
法学部
関西学院大学
法学部
キャンパス学部2016千里山【中間型】西宮上ケ原【中間型】
1年以内退学率(%)学部201400.2
4年間退学率(%)学部201453.8
入学者の地元占有率(%)学部201647.834.5
女子入学者の割合(%)学部201638.544.6
大学全体の女子学生数(人)大学20161139811390
大学全体の男子学生数(人)大学20161717012108
大学全体の女子学生比率(%)大学201639.90%48.50%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20111745
受入留学生数(人)学部2015249
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.80%0.30%
長期留学派遣学生数(人)大学20152496
長期留学派遣の割合(%)大学20150.30%1.70%
ST比(人)学部201559.455.4
専任教員数(人)学部20155352
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.312.6

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。関西大法学部は、大阪のターミナル駅梅田から電車で25分、阪急千里線の関大前駅から徒歩5分の「千里山キャンパス」で4年間を過ごす。周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。利便性の高いキャンパスと言えるだろう。
 一方の、関西学院大学はオシャレなキャンパスとして知られる「西宮上ケ原キャンパス」で4年間を過ごす。阪急今津線甲東園駅、仁川駅から徒歩15分で、アクセス面では、少し都市部から離れており、キャンパス外にほとんどお店などはない。しかし、キャンパス内の売店などは充実しており、なんでもキャンパス内で済ませられるようになっているため、大きな不便はないだろう。
 キャンパスを比較すると、アクセス面では関西大が有利と思われる。しかし、なんでもキャンパス内で完結する関西学院大のオシャレなキャンパスも劣っているとは言いがたく、価値観によってどちらで大学生活を送りたいかという判断は異なるだろう。実際に足を運んで自分の目で確かめることをお勧めする。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は関西大法学部、4年退学率は関西学院大法学部が低い。しかし、双方に大きな差はなく、双方とも低い数値であることがわかる。したがって、退学率が大学選択の判断材料にはならないといえるだろう。
 なお、大学通信社による2014年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、関西大は36位(19ポイント)、関西学院大は上位50位以下のランク外(14ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、関西大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、学部単位の男女比については、関西学院大法学部の方が6%高い。また、大学単位でも女子学生比率が高い。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内の雰囲気が華やかであることは間違いない事実だろう。
 また、外国人留学生の比率については、関西大法学部が多く、教室内の国際性という意味では、関西大法学部が優れているといえる。
 上記を総合すると、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、ほぼ互角といえるだろうか。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学派遣率が高い関西学院大が優勢といえるだろう。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、留学している比率の高い方へ行くというのも一つの手だろう。
 さらに、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、関西学院大法学部の方がやや少ないが、両学部とも高めの数字である。少人数教育に過度な期待は持たない方がいいだろう。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、関西学院大の方が少し多いが、ほとんど差はないと考えていいだろう。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、ほぼ互角という印象である。大きな判断材料は、やはりキャンパスの立地になるだろうか。繰り返しになるが、実際にキャンパスを訪れてみることもおすすめする。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度関西大学
法学部
関西学院大学
法学部
主要企業400社への就職率(%)大学201620.628.2
卒業生数(人)学部2015714652
進学者数(人)学部20152743
進学率(%)学部20153.80%6.60%
公務員就職者数(人)学部20157172
公務員就職比率(%)学部20159.90%11.00%
警察官就職者数(人)大学20155630
国家公務員総合職(人)大学2015109
CA採用数(人)大学20141031
国会議員の数(人)大学201565
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201544753576
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.160.15
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)77
上場企業の役員数(人)大学2015351399
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0120.017

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、関西学院大が8%ほど高い。ただし、男子学生のみで考えると、両校の差はわずかになるだろう。というもの、主要400社の就職率データには「一般職」での就職が含まれており、その場合は「総合職」より入社しやすい傾向がある。関西学院大は関西大と比べて女子学生比率が10%ほど高く、この「400社就職率」が高く出やすい。男子学生で「一般職」を選ぶケースはほぼないと考えられることから、「総合職」として400社に就職できる可能性は、数%の差に縮まると考えて良いだろう。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、関西大法学部と関西学院大法学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
 法学部を選ぶのであれば、弁護士などの法曹になりたい人も多いと思うが、もし法曹として進路を希望するのであれば、関西学院大の方が良いかもしれない。
 法科大学院制度の導入により、法曹への可能性は「進学率」を比較するのが王道だが、関西学院大法学部の方がやや高いのが一つ目の理由である。また、そもそも入学難易度の差により関西学院大法学部の方が「試験勉強がより得意な学生が集まっている」と思われるため、司法試験を目指す環境として優れていると思われることも、関西学院大の方が法曹志望者向きと考える理由として挙げられる。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、どちらも2ケタで高いが、より関西学院大法学部が高い。主要400社の就職率がこれだけ高いにもかかわらず、公務員就職率も高いということは、関西学院大の強みであると言える。
 一方で「警察官」に限ってみれば、関西大の方が実績は多く、職種によっては関西大の方が就職率が高いケースもありうるため、公務員志望の場合は両大学の就職データを詳しく調べてみると良いかもしれない。

<主要な就職先の比較>

関西大学
法学部
関西学院大学
法学部
三井住友銀行三井住友銀行
大阪府警察国家公務員
紀陽銀行日本郵便
国税庁(国税専門家)三菱東京UFJ銀行
国家公務員
りそな銀行
明治安田生命保険
日本郵便
あいおいニッセイ同和損害保険
大阪市職員

 主要就職先の上位は明確な差は見られず、大手金融機関が中心となっている。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、ほぼ互角と言って良いだろう。上場企業の社長数では関西大法学部が勝っており、一方で、上場企業の役員数では関西学院大法学部が多い。どちらが「学閥」として有利かは五分五分と言えるだろう。

<上位校との差について>
 両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも京大・阪大・神大などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH・関関同立出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度関西大学
法学部
関西学院大学
法学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015682,253639,494
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152428

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、関西学院大がやや勝っており、改革で先行しているイメージがある。しかしその差はわずかであり、ほぼ互角と言っていいかもしれない。

<まとめ>
 以上、関西大法学部と関西学院大法学部を比較してみてきた。全体としては、関西学院大法学部が僅かに優位の印象を受ける。キャンパスライフ面では差はないが、入試難易度と就職実績でやや差があるように思われる。
 なお、実際に双方の学部に合格した人の選択を見てみてみると、関西大法学部に進学した人が5%、関西学院大法学部に進学した人が95%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という圧倒的な結果が出ている。しかし、コスト面など関西大法学部が勝っている部分もあり、是非、両大学のキャンパスの見学をしたうえで決めてもらえればと思う。