2017年2月3日金曜日

産近甲龍対決:龍谷大文学部VS近畿大文芸学部

 今回は、いわゆる「産近甲龍」の中のライバル校同士である、龍谷大文学部と近畿大文芸学部について比較していきたい。

※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度龍谷大学
文学部
近畿大学
文芸学部
大学全体の学部生数(人)大学20151752431586
学部の学生数(人)学部201539392141
入試難易度(河合塾)学部201657.552.5
入試難易度(駿台)学部20165249
入試難易度(ベネッセ)学部20166862
入学者数(人)学部2016924569
競争入試での入学者(人)学部2016525272
競争入試の割合(%)学部201656.80%47.80%
現役入学者の比率(%)学部20168888.8

 入試難易度は3社とも龍谷大文学部が上の数値を出している。駿台こそ僅差であるものの、残りの2社は結構な差が出ているため、「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、龍谷大文学部に軍配が上がる。
 また、競争入試の割合についても、龍谷大の方が明らかに高く、定員も多い。偏差値比較においては、龍谷大文学部が低く出てしまう傾向にあるため、両学部の差は見かけの難易度以上の差があると考えてもいいかもしれない。
 (一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があるため、「競争入試の割合」を本ブログでは比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度龍谷大学
文学部
近畿大学
文芸学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015403593
学生還元率(%)大学201534.90%42%以下
奨学費(円)大学2015770,874,120数値なし
学生一人当たりの奨学費(円)大学201543,990数値なし
卒業率(%)学部20147378
最寄駅の平均家賃(万円)2016深草4~4.5、
大宮4~4.5
3~3.5

 4年間でかかる学費については、龍谷大文学部の方がかなり安い。この差は、大きなインパクトがある。ただし、学科によって学費が違うため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
 なお、学生還元率や奨学費のデータについては、近畿大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。
 龍谷大の学生還元率や奨学費は悪くない数字と言えるため、便宜上「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、龍谷大に軍配を上げておきたい。
 なお、一人暮らしをする場合には、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、京都の家賃が高い分、龍谷大の方がやや高い(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、近畿大文芸学部の方が6%ほど低いのも一つの判断材料にはなるだろう。
 以上の通り、留年リスクや家賃面では近畿大が優勢であるが、その他のコスト面では、全般的に龍谷大文学部が勝っている。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度龍谷大学
文学部
近畿大学
文芸学部
キャンパス学部2016深草(1年)【都市型】、
大宮(2~4年)【都市型】
東大阪【中間型】
1年以内退学率(%)学部20140.91.1
4年間退学率(%)学部20149.86.4
入学者の地元占有率(%)学部201616.155.4
女子入学者の割合(%)学部201642.357.8
大学全体の女子学生数(人)大学201672799752
大学全体の男子学生数(人)大学20161195422570
大学全体の女子学生比率(%)大学201637.80%30.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011数値なし(2人以下)数値なし(2人以下)
受入留学生数(人)学部2015817
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.20%0.80%
長期留学派遣学生数(人)大学20157710
長期留学派遣の割合(%)大学20151.80%0.10%
ST比(人)学部201538.233.5
専任教員数(人)学部201510364
一人当たり貸出冊数(冊)大学201510.88.6

<キャンパスの立地>
 龍谷大学文学部は、1年次は、京阪電鉄深草駅・JR稲荷駅・地下鉄くいな橋駅の3駅利用可のアクセル良好な「深草キャンパス」で過ごす。そして2年次以降は、さらにアクセス良好となり京都駅から徒歩10分の「大宮キャンパス」で3年間をすごす。歴史的建造物に囲まれた「ザ・京都」とでも言うべきキャンパスで「文学部」という学問とも合致した学生生活が送れる環境にある。
 一方の近畿大文芸学部は、大阪のターミナル駅なんば駅から近鉄電車で20分の長瀬駅から徒歩10分の「本部キャンパス」で4年間を過ごす。都会ではないが、周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。緑も豊富ながらも利便性も悪くない、バランスの取れたキャンパスと言えるだろう。
 キャンパスを比較すると、龍谷大文学部に軍配が上がる。近畿大のキャンパスも悪くはないが、なんといっても龍谷大の大宮キャンパスの環境・立地が貴重であり、「文学部」においてはこの上ない環境ともいえる。ただし、大阪か京都かでも異なるし、価値観によってどちらで大学生活を送りたいかという判断は異なるため、実際に足を運んで自分の目で確かめることをお勧めする。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は双方とも大きな差はないものの、4年退学率は、龍谷大文学部の退学率が高い。10%近い4年退学リスクは、龍谷大文学部のマイナスポイントといえる。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、学部単位の男女比については、近畿大が多く、6割弱を誇る。一方で、大学全体の女子学生比率は龍谷大が8%ほど高い。女子学生比率は五分五分とみていいだろう。
 また、外国人留学生の比率については、近畿大文芸学部が多く、教室内の国際性という意味では、近畿大文芸学部が優れているといえる。
 なお、入学者の地元占有率を比較すると、近畿大の方が圧倒的に高く、様々な都道府県から学生を集めているかという比較においては、龍谷大文学部が勝っていると思われる。
 よって、「学生の属性が多様であり、多様な価値観に触れることができるか」という観点では、互角に近いと言えるだろう。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学派遣率が高い龍谷大が優勢といえる。かなりの差が開いている。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、留学している比率の高い方へ行くというのも一つの手だろう。
 また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、近畿大文芸学部が少なく、より「少人数教育」の環境もより整っているといえる。しかし、大きな差ではないため、判断材料にはならないだろう。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、龍谷大の方が多い。しかし、差は大きくはない。
 また、大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大は21位(24ポイント)、龍谷大はランク外(53位以下)となっている。
 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、抜群のキャンパス環境を誇る龍谷大がやや優勢だろうか。しかし、近畿大が勝っている部分も少なくないため、歴史的建造物に囲まれて過ごす学生生活に魅力を感じず、賑やかな大阪で学生生活を過ごしたいのであれば近畿大を選ぶということになるだろう。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度龍谷大学
文学部
近畿大学
文芸学部
主要企業400社への就職率(%)大学201610%以下10%以下
卒業生数(人)学部2015863463
進学者数(人)学部2015857
進学率(%)学部20159.80%1.50%
公務員就職者数(人)学部20153916
公務員就職比率(%)学部20154.50%3.50%
警察官就職者数(人)大学20155295
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし(1人以下)2
CA採用数(人)大学2014数値なし(8人以下)数値なし(8人以下)
国会議員の数(人)大学201522
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201511076243
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.060.2
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)数値なし(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学201563139
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0040.004

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、龍谷大文学部が高いが、差は大きくないため、気にするほどではないだろう。一方で、「警察官」の就職実績は近畿大の方が多く、警察官就職率は近畿大の方が高いだろう。そのあたりは参考にしたい。

<主要な就職先の比較>

龍谷大学
文学部
近畿大学
文芸学部
京都府教育委員会大阪府教育委員会
京都銀行近畿大阪銀行
大阪府教育委員会奈良県農業協同組合
奈良県教育委員会兵庫県教育委員会
日本アクセス奈良県教育委員会
京都府庁和歌山県教育委員会
大阪市役所堺市教育委員会
ヤマハ大塚製薬
三井住友銀行資生堂
法務省近畿日本ツーリスト

 主要就職先の上位は双方とも「教員」が多いのが特徴的である。双方とも就職状況は悪くないと言える。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、大学の規模を加味すればほぼ互角といえる。上場企業の社長数、役員数ともにそれなりの数を輩出している。ただ、「学閥」といえるほどは輩出していないため、そのあたりは期待できないだろう。また、近畿大は、何よりも卒業生数の多さが強みであり、大企業から中小企業まであらゆる企業に卒業生がいることはメリットになるだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度龍谷大学
文学部
近畿大学
文芸学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015206,445495,208
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151216

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、近畿大が勝っており、改革でやや先行しているイメージがある。
 また、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大が1位(296ポイント)、龍谷大はランク外(21位以下)となっており、高校現場の印象でも、近畿大が改革のイメージが強いようである。

<まとめ>
 以上、龍谷大文学部と近畿大文芸学部を比較してみてきた。全体としては、難易度通りに龍谷大文学部が優位の印象を受ける。ただし、近畿大が勝っている数多く部分もあるため、最終的な判断については、是非、両大学のキャンパスの見学をしたうえで決めてもらえればと思う。特に近畿地方以外から進学する場合は、足を運んでみることを特にお勧めしたい。