(一般的な評価は「同志社大が優勢」という評価のようだが、果たしてその評価が正しいのか検証していく）。
※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。
「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」
| 項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 理工学部 | 関西大学 システム理工学部 |
| 大学全体の学部生数（人） | 大学 | 2015 | 26733 | 28642 |
| 学部の学生数（人） | 学部 | 2015 | 3398 | 2289 |
| 入試難易度（河合塾） | 学部 | 2016 | 60 | 52.5 |
| 入試難易度（駿台） | 学部 | 2016 | 58 | 51 |
| 入試難易度（ベネッセ） | 学部 | 2016 | 70 | 60 |
| 入学者数（人） | 学部 | 2016 | 839 | 533 |
| 競争入試での入学者（人） | 学部 | 2016 | 529 | 357 |
| 競争入試の割合（％） | 学部 | 2016 | 63.10% | 67.00% |
| 現役入学者の比率（％） | 学部 | 2016 | 71.3 | 数値なし |
入試難易度は3社とも同志社大理工学部が上の数値を出している。それも、結構な差が出ているため、「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、同志社大理工学部に軍配が上がる。
なお、「競争入試の割合」は関西大が高く、各予備校の難易度は同志社の方が高めに出る傾向はあるだろうが、両者の差はそれなりに差がついているため、いわゆる偏差値操作の可能性については、あまり考慮には入れなくて良いだろう。
（一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があるが、同志社大理工学部は60％以上の割合を保っているので、偏差値操作にはあたらない）
「費用対効果はどちらが高いか」
| 項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 理工学部 | 関西大学 システム理工学部 |
| 4年間でかかる学費（万円） | 学部 | 2015 | 633 | 630 |
| 学生還元率（％） | 大学 | 2015 | 40.40% | 40.20% |
| 奨学費（円） | 大学 | 2015 | 1741210343 | 1501165119 |
| 学生一人当たりの奨学費（円） | 大学 | 2015 | 65,133 | 52,411 |
| 卒業率（％） | 学部 | 2014 | 78 | 73 |
| 最寄駅の平均家賃（万円） | 2016 | 3～3.5 | 3.5～4 |
4年間でかかる学費については、3万円ほど同志社大理工学部が高いが、誤差の範囲である（学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい）。
学生還元率はほぼ互角で、一人当たりの奨学費は同志社大が多い。しかし、その差が大きいわけではない。「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点では、ほぼ互角といえるだろう。
なお、キャンパス周辺の家賃を比較してみると、同志社大の方がやや安い。
一方、留年リスク（4年間で卒業できない比率）については、同志社大の方が５％ほど低い。ギリギリ誤差の範囲内といえるだろうか、これ以上開くとやや気になる数字でははある（言うまでもなく、留年した場合には余計に学費がかかる）。
以上のことから、コスト面では、ほぼ互角といえるが、強いて優劣をつけると、僅かに同志社大が勝っているといえるくらいか。
「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」
| 項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 理工学部 | 関西大学 システム理工学部 |
| キャンパス | 学部 | 2016 | 京田辺【郊外型】 | 千里山【中間型】 |
| 1年以内退学率（％） | 学部 | 2014 | 1.5 | 0.9 |
| 4年間退学率（％） | 学部 | 2014 | 5 | 8.3 |
| 入学者の地元占有率（％） | 学部 | 2016 | 14.1 | 54 |
| 女子入学者の割合（％） | 学部 | 2016 | 16.7 | 6.8 |
| 大学全体の女子学生数（人） | 大学 | 2016 | 11349 | 11398 |
| 大学全体の男子学生数（人） | 大学 | 2016 | 15704 | 17170 |
| 大学全体の女子学生比率（％） | 大学 | 2016 | 42.00% | 39.90% |
| 女性ファッション誌登場人数（人） | 大学 | 2011 | 19 | 17 |
| 受入留学生数（人） | 学部 | 2015 | 68 | 24 |
| 留学生比率 （留学生数／全学生数） | 学部 | 2016 | 2.00% | 1.00% |
| 長期留学派遣学生数（人） | 大学 | 2015 | 233 | 24 |
| 長期留学派遣の割合（％） | 大学 | 2015 | 3.50% | 0.30% |
| ST比（人） | 学部 | 2015 | 32.4 | 26.6 |
| 専任教員数（人） | 学部 | 2015 | 105 | 86 |
| 一人当たり貸出冊数（冊） | 大学 | 2015 | 11.9 | 11.3 |
＜キャンパスの立地＞
まずはキャンパスの立地から。同志社大理工学部は京都駅からのアクセスだと近鉄で30分の興戸駅から徒歩15分の「京田辺キャンパス」で4年間を過ごす。率直に言うと、アクセスはあまりよくない。その分、緑いっぱいの広大なキャンパスで伸び伸びとした学生生活を送ることができる。研究をしたい理系学生にとっては悪い環境ではない。
一方の関西大法学部は、大阪のターミナル駅梅田から電車で25分、阪急千里線の関大前駅から徒歩5分の「千里山キャンパス」で4年間を過ごす。周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。利便性の高いキャンパスと言えるだろう。
キャンパスの立地については、一般的な価値観で考えるならば関西大システムが優位とえよう。しかし、同志社の京田辺キャンパスは「学術研究都市」というだけあって、理系学生が腰を据えて研究を行うには良い環境で、理系学部に進学する学生にとっては、関西大がキャンパス立地上で確実に有利とも限らないだろう。
＜ドロップアウトリスク＞
続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は関西大システム理工学部が低く、4年退学率は同志社大理工学部低い数値となっている。よって互角と言いたいところだが、関西大システム理工学部の4年退学率がやや高めの印象を受ける。もともと理系学部は退学率が文系学部と比べて高めになるが、少し気になる数値ではある。
＜学生の属性＞
次に、学生の属性を比較していくと、学問・研究分野の違いからか、同志社大の女子学生比率が10％ほど高い。数値にすると2倍以上であるため、かなりの差と言っていいだろう。
地元占有率は同志社大が低く、全国から学生を集めているのは同志社大と言えそうだ。
また、外国人留学生の割合については、同志社大理工学部が2倍の数値となっており、同志社の学習環境が国際的であるといえる。
多様な学生の価値観に触れるという意味では、同志社大理工学部が有利と判断できる。
＜教育面＞
次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、同志社大に軍配が上がる。長期留学の派遣割合は10倍の差があり、かなりの差があると言って良い。ただし、この数値は大学全体の数値となっており、理工系の学生の留学率はこの数値より低くなることが想定されるため、そのあたりご留意いただきたい。
次に、専任教員一人当たりの学生数（ST比）を比較すると、こちらは関西大システム理工学部が勝っている。「少人数教育」の環境がより整っているのは関西大システム理工学部といえるだろう。
なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、ほぼ互角である。
実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、同志社大が18人、関西大はランク外（5人以下）、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、同志社大が9人、関西大が13人であり、高校側の印象では、同志社大の方が教育力があると感じているようだ。
その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング（進学校の進路指導教員が投票することで選定）において、同志社大は16位（37ポイント）、関西大は20位（25ポイント）となっている。こちらでも、同志社大がやや優位のようだ。
上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、教育面では同志社大が優位だが、キャンパス面を考慮するとほぼ互角という印象である。しかし、どのような価値観を持っているかによってこの判断は大きく変わってくるであろう。もし、同志社大の京田辺キャンパスを訪れて気にいるようであれば、間違いなく同志社大を選んだ方が良いだろう。逆に、関西大の賑やかなキャンパスが魅力的であれば、そちらを選ぶというのも悪くない選択である。
「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」
| 項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 理工学部 | 関西大学 システム理工学部 |
| 主要企業400社への就職率（％） | 大学 | 2016 | 32.5 | 20.6 |
| 卒業生数（人） | 学部 | 2015 | 721 | 504 |
| 進学者数（人） | 学部 | 2015 | 386 | 172 |
| 進学率（％） | 学部 | 2015 | 53.50% | 34.10% |
| 公務員就職者数（人） | 学部 | 2015 | 12 | 11 |
| 公務員就職比率（％） | 学部 | 2015 | 1.70% | 2.20% |
| 警察官就職者数（人） | 大学 | 2015 | 19 | 56 |
| 国家公務員総合職（人） | 大学 | 2015 | 26 | 10 |
| CA採用数（人） | 大学 | 2014 | 11 | 10 |
| 国会議員の数（人） | 大学 | 2015 | 3 | 6 |
| 上場企業の社長数（人） | 学部 | 2006 | 8 | ※８ |
| 社長の数（人） | 大学 | 2015 | 5561 | 4475 |
| 社長になりやすさ （社長の数／学生数） | 大学 | 2015 | 0.21 | 0.16 |
| 上場企業の役員数（人） | 学部 | 2006 | 82 | ※77 |
| 上場企業の役員数（人） | 大学 | 2015 | 472 | 351 |
| 上場企業の役員になりやすさ （上場企業役員数／学生数） | 大学 | 2015 | 0.018 | 0.012 |
＜大企業に入りたい＞
大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、同志社大が10％以上高い数字が出ている。これは高い数値といえる。しかし、この数字は大学全体の数字であり、理系学部の場合は優秀な学生は大学院に進学するケースが多いことが想定されるため、あくまで「参考数値」として見ていただきたい。
＜大学院に進学する＞
進学率は、同志社大理工学部の方が、20％程度高い。大学院進学を想定しているのであれば、同志社大理工学部の方が良いだろう。もっとも、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、より幅広い学問分野を扱う同志社大と、分野を絞っている関西大とで単純比較はできない側面もある。
＜公務員になりたい＞
学部単体の公務員就職比率は、関西大システム理工学部の方が高い数字が出ている。しかし、ほとんど差はないため、大学選択の判断材料にはならないだろう。
なお、いわゆるキャリア官僚職「国家公務員総合職」の合格実績については、同志社大の方が優れた実績を残しており、キャリア官僚を目指すのであれば同志社大をおすすめする。
一方で、警察官になりたい場合は、逆に関西大の実績が優れていることも付記しておきたい。
＜主要な就職先の比較＞
| 同志社大学 理工学部 | 関西大学 システム理工学部 |
| パナソニック | 大阪府教員 |
| 日立製作所 | 三菱電機 |
| トヨタ自動車 | クボタ |
| 三菱電機 | 西日本旅客鉄道 |
| 本田技研工業 | ローム |
| 関西電力 | エクセディ |
| ダイキン工業 | 警視庁 |
| 日本電気 | ジェイテクト |
| 豊田自動織機 | トランス・コスモス |
| 野村総合研究所 | 奈良県教員 |
主要就職先は、同志社大の実績が見事に日本を代表する一流企業群が名を連ねている。関西大システム理工学部の実績も悪くはないのだが、同志社大と比べると見劣りしてしまうのは否めない。主要就職先を見る限りでは、同志社大理工学部の方が就職に強いと言っていいかもしれない。
＜出世した先輩の多さ＞
先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、同志社大がやや優勢か。なお、学部別の役員輩出数などは3学部に分かれる以前の「関西大学理工学部」の数値となっており、単純比較はできないため、ここではあくまで「大学名」での学閥比較としたい。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。そういう意味で、「上場企業の役員になりやすさ」等は同志社大の方が高く、少しは有利かもしれない。もちろん、企業によって事情は異なるし、関西大システム理工学部だからといって不利になることはないだろうが、あくまでも「少しは」といった程度である。
＜どちらの大学が頑張って「改革」しているか＞
| 項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 理工学部 | 関西大学 システム理工学部 |
| 国からの特別補助金 支給額（千円） | 大学 | 2015 | 583,280 | 682,253 |
| 学生一人当たり特別補助金 支給額（千円） | 大学 | 2015 | 22 | 24 |
大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている（大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…）。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
この数値を比較すると、関西大が僅かに勝っているが、ほとんど互角といっていいほどの差であろう。
なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング（進学校の進路指導教員が投票することで選定）においては、同志社大が17位（21ポイント）、関西大は44位(8ポイント)であり、高校現場の印象では、同志社大の方が改革で先行しているイメージがあるようだ。
＜まとめ＞
以上、同志社大理工学部と関西大システム理工学部を比較してみてきた。全体としては、やはり同志社大理工学部が優位であると言える。なお、実際に双方の学部に合格した人の選択を見てみてみると、同志社大理工学部に進学した人が100％、関西大システム理工学部に進学した人が0％（サンデー毎日2014年7月20日号より）という圧倒的な結果が出ている。しかし、関西大理工学部が勝っている部分も少ないわけではなく、特にキャンパスの立地に魅力を感じる場合などは関西大を選択するケースもあろう。
一方で、強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人（教員）」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。
