2017年1月17日火曜日

産近甲龍対決:京都産業大法学部VS近畿大法学部

 いわゆる「産近甲龍」のなかで比べられることの多い、京都産業大と近畿大。今回は両校の「法学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。

※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
法学部
近畿大学
法学部
大学全体の学部生数(人)大学20151288831586
学部の学生数(人)学部201527953070
入試難易度(河合塾)学部201642.550
入試難易度(駿台)学部20164648
入試難易度(ベネッセ)学部20165462
入学者数(人)学部2016645625
競争入試での入学者(人)学部2016332357
競争入試の割合(%)学部201651.50%57.10%
現役入学者の比率(%)学部20169284

 入試難易度は3社とも近畿大法学部が上の数値を出している。それも、結構な差が出ているため、「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、近畿大法学部に軍配が上がる。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
法学部
近畿大学
法学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015398445
学生還元率(%)大学201533.60%42%以下
奨学費(円)大学2015360,491,399数値なし
学生一人当たりの奨学費(円)大学201527,971数値なし
卒業率(%)学部201477.578
最寄駅の平均家賃(万円)20164~4.53~3.5

 4年間でかかる学費については、京都産業大法学部が47万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 学生還元率や奨学費のデータについては、近畿大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。
 一方で、キャンパス周辺の家賃を比較してみると、近畿大の方がやや安い。下宿コストについては近畿大の方がかからないだろう。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほとんど差はないため誤差の範囲内であろう。
 上記を総合すると、コスト面をトータルで考えると、京都産業大法学部が優位といえる(やはり学費の差が大きいと感じる)。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
法学部
近畿大学
法学部
キャンパス学部2016神山【中間型】東大阪【中間型】
1年以内退学率(%)学部20141.40.9
4年間退学率(%)学部20146.76.8
入学者の地元占有率(%)学部201625.347.7
女子入学者の割合(%)学部201623.325.6
大学全体の女子学生数(人)大学201640129752
大学全体の男子学生数(人)大学2016879422570
大学全体の女子学生比率(%)大学201631.30%30.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011数値なし(2人以下)数値なし(2人以下)
受入留学生数(人)学部201590
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.30%0.00%
長期留学派遣学生数(人)大学20159610
長期留学派遣の割合(%)大学20153.00%0.10%
ST比(人)学部201566.566.7
専任教員数(人)学部20154246
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.38.6

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。京都産業大法学部は京都市内の地下鉄国際会館駅からバスで約10分の「神山キャンパス」で4年間を過ごす。交通の便は良いとは言えないが、その分、広々したキャンパスで、周囲は京都の落ち着いた雰囲気を感じつつ、学生生活を送ることができる。付近に店はあまりないため、歓楽街などはキャンパスから少し離れた場所まで繰り出すことになるが、京都市内の大学の大半は同じなので、デメリットではないだろう。
 一方の近畿大法学部は、大阪のターミナル駅なんば駅から近鉄電車で20分の長瀬駅から徒歩10分の「本部キャンパス」で4年間を過ごす。都会ではないが、周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。緑も豊富ながらも利便性も悪くない、バランスの取れたキャンパスと言えるだろう。
 キャンパスの立地については、甲乙つけがたい。京都産業大の神山キャンパスの緑に囲まれた環境も魅力的であるし、近畿大の学生街も魅力的である。結局は両方に足を運んで実際に自分の目で見た方がいいかもしれない。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は近畿大法学部、4年退学率は京都産業大法学部が低いという数字が出ている。しかし大差ではないため、これをもって優劣はつけられまい。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、女子学生比率は学部単位、大学単位の双方ともほとんど変わらない。
 また、留学生比率については、京都産業大法学部が勝っており、国際的な学習環境は京都産業大法学部が優位に立っている。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、京都産業大に軍配が上がる。近畿大と比べて30倍の留学生派遣比率であり、かなり差がある。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、注目したい数値であり、一つの判断材料にもなりうるだろう。
 また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、こちらの数値はほぼ同じである。どちらも数値が高めであり「少人数教育」の環境が整っているとは言えない状況だ。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、京都産業大の方が勝っている。
 その他の比較としては、大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、京都産業大は47位(11ポイント)、近畿大は21位(24ポイント)となっている。高校からの評価では、近畿大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや京都産業大法学部が優位といえるだろう。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
法学部
近畿大学
法学部
主要企業400社への就職率(%)大学201611.710%以下
卒業生数(人)学部2015615671
進学者数(人)学部20151618
進学率(%)学部20152.60%2.70%
公務員就職者数(人)学部20157477
公務員就職比率(%)学部201512.00%11.50%
警察官就職者数(人)大学20157195
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし(1人以下)2
CA採用数(人)大学2014数値なし(8人以下)数値なし(8人以下)
国会議員の数(人)大学201502
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201521366243
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.170.2
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)数値なし(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学201587139
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0070.004

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、京都産業大は2ケタ以上の数値を誇っており、近畿大と比較して優れているといえる。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、京都産業大法学部の方が高い数字を誇っているが、僅差であるため判断材料にはならないだろう。双方とも警察官としての就職が多いようである。

<主要な就職先の比較>

京都産業大学
法学部
近畿大学
法学部
京都府警察本部大阪府警察
大阪府警察本部三井住友銀行
京都中央信用金庫大和ハウス工業
滋賀県警察本部大阪府教育委員会
京都信用金庫西日本旅客鉄道
日本生命保険紀陽銀行
西日本旅客鉄道近畿大阪銀行
国税庁(国税専門家)三菱東京UFJ銀行
堀場製作所神戸製鋼所
ワコール東日本電信電話

 主要就職先は、双方とも高い公務員就職率を裏付ける内容となっており、特に京産大法学部は「警察官」が目立つ。警察官の採用数は近畿大が多いが、近畿大の方が学生数が多いため、警察官になっている率でいえば京都産業大の方が上になり、警察官になりやすいのは京産大と言っていいかもしれない。その他は双方とも金融機関が目立っている。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、社長輩出率は近畿大、役員輩出率は京産大が上の数字となっており、学閥的には、ほぼ互角と考えていいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度京都産業大学
法学部
近畿大学
法学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015225,533495,208
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151716

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。
 扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。この数値を比較すると、京都産業大が僅かに勝っているが、ほとんど差はない。互角といっていいだろう。
 しかし、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大が1位(296ポイント)、京都産業大はランク外(21位以下)となっており、高校現場の印象では、近畿大が改革のイメージが強いようである。

<まとめ>
 以上、京都産業大法学部と近畿大法学部を比較してみてきた。全体としては、ほぼ互角といっていいだろう。入試難易度は近畿大法学部が優位であるため、近畿大を選ぶケースが多いだろうが、キャンパスライフの充実度や学費のことを考えると、安易に入試難易度だけで選ぶのはもったいないような気もする。キャンパスの立地の項でも書いたが、実際に両校のキャンパスを訪問してみて、どちらが自分にとってより充実した学生生活を送れるかイメージした上で進学する大学を選択すると良いだろう。