2017年1月16日月曜日

MARCH対決:青山学院大理工学部VS立教大理学部

 今回の比較対象は、MARCHの中のライバル校として知られる、青山学院大と立教大。そのなかで、青山学院大理工学部と立教大理学部の両方に合格した場合はどちらに進学した方が良いかという観点から比較していきたい。

※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
立教大学
理学部
大学全体の学部生数(人)大学20151760119481
学部の学生数(人)学部201526951230
入試難易度(河合塾)学部201657.560
入試難易度(駿台)学部20165355
入試難易度(ベネッセ)学部20166467
入学者数(人)学部2016646265
競争入試での入学者(人)学部2016459203
競争入試の割合(%)学部201671.10%76.60%
入試方式の数(競争入試)学部201545
現役入学者の比率(%)学部201679.3数値なし
※立教大の競争入試の入学者数は2015年度の数値

 入試難易度は3社とも立教大理学部の方が上の数値を出している。
 さらに、「競争入試の割合」、「入試方式の数」も立教大理学部の方が多いため、「入学時にどちらの学部が優秀な学生を集めているか」という観点では、立教大理学部の方が優位と言えそうだ。
(MARCHクラスの大学では、競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。その他、偏差値を下げないための方策として、入試方式を増やして、各入試方式の定員を小さくすることで見かけの偏差値を維持するという手法もある。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
立教大学
理学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015639654
学生還元率(%)大学201531.80%38.40%
奨学費(円)大学2015385,868,990680,670,582
学生一人当たりの奨学費(円)大学20152192334,940
卒業率(%)学部201476.877.5
最寄駅の平均家賃(万円)20164.0~4.56.5~7

 4年間でかかる学費については、青山学院大理工学部の方が15万円ほど安い。ただし、学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
 一方で、学生還元率や一人当たりの奨学費は立教大が勝っている。
 なお、一人暮らしをする場合、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、コスト的には青山学院大の方が割安となることが予想される(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 一方で、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほとんど差はなく、誤差の範囲といえるため、判断材料にはならないだろう。
 以上の通り、コスト面を総合すると、青山学院大理工学部がやや優位と言えそうだ。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
立教大学
理学部
キャンパス学部2016相模原【郊外型】池袋【都市型】
1年以内退学率(%)学部20140.90.7
4年間退学率(%)学部20145.64.6
入学者の地元占有率(%)学部201640.2数値なし
大学全体の首都圏出身比率(%)大学20156673.3
女子入学者の割合(%)学部201621.429.6
大学全体の女子学生数(人)大学2016870710377
大学全体の男子学生数(人)大学201690279069
大学全体の女子学生比率(%)大学201649.10%53.40%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011277120
受入留学生数(人)学部2015286
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.00%0.50%
長期留学派遣学生数(人)大学201584121
長期留学派遣の割合(%)大学20151.90%2.50%
ST比(人)学部20152019.8
専任教員数(人)学部201513562
一人当たり貸出冊数(冊)大学20159.710.3

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。青山学院大理工学部は、文系とは異なり神奈川県相模原市のキャンパスで4年間を過ごす。「郊外型キャンパス」であり、学問分野からすると、遊ぶ暇はあまりないため、勉強する環境としては決して悪くない環境といえる。
 一方の立教大理学部は、巨大ターミナル駅である池袋駅から徒歩7分の抜群の立地。立教大のイメージと違い、池袋にオシャレなイメージはあまりないが、その分、物価面などで学生にとっては過ごしやすい街かもしれない。
 キャンパスの立地については、一般的な高校生の価値観では、立教大理学部の方が上と感じるだろう。ただし、学問分野からすると「大学時代に思い切り遊ぶ」というようなが学部ではないため、静かな学習環境としては、青山学院大相模原キャンパスは悪くないと思われる。このあたりは、当人の価値観次第であろうから、実際にキャンパスを訪れてみることをお勧めする。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、立教大理学部の方がやや低いことがわかる。しかし、青山学院大理工学部も高くはなく、判断材料にはならないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、青山学院大は27位(26ポイント)、立教大が23位(28ポイント)となっており、高校教育の現場においては、立教大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。つまり退学率のデータと一致している。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、女子学生比率は理系だけあって双方とも20%台と高くはないが、立教大理学部の方が8%ほど比率が高い。特に立教大学理学部はキャンパスが文系と同じキャンパスであるため、キャンパスの華やかさでは、立教大に軍配が上がるだろう。
 なお、留学生比率については、青山学院大理工学部の方がやや多く、国際色豊かな教育環境という意味では、青山学院大学が優れているといえる。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、立教大がやや優勢だ。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないだろう。
 また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、立教大理学部の方が低いが、まさに誤差程度の差でしかなく、「少人数教育」の環境については互角といえる。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、ほぼ互角という数字が出ている。
 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、青山学院大が9人、立教大が16人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、青山学院大が9人、立教大が4人であり、高校側の印象では、立教大の方が勝っているようだ。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、青山学院大は21位(24ポイント)、立教大は13位(47ポイント)となっている。こちらでも立教大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや立教大が優勢というような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
立教大学
理学部
主要企業400社への就職率(%)大学201629.828.3
卒業生数(人)学部2015641294
進学者数(人)学部201522581
進学率(%)学部201535.10%27.60%
公務員就職者数(人)学部2015108
公務員就職比率(%)学部20151.60%2.70%
警察官就職者数(人)大学20151612
国家公務員総合職(人)大学201543
CA採用数(人)大学20145024
国会議員の数(人)大学2015105
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201540254023
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.230.21
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)数値なし(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015233250
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0130.013

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 主要400社への就職率については、青山学院大がやや高いが、数値差はわずかであり、実際の差はないと考えていいだろう。
 いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、青山学院大理工学部と立教大理学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、青山学院大理工学部の方が高い。もっとも、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、単純比較はできない側面もある。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、立教大理学部が高い。進学率が低い分、就職者が多いことがその差の原因と思われるため、さほど気にする差ではないだろう。いわば互角に近いと考えて良い。

<主要な就職先の比較>

青山学院大学
理工学部
立教大学
理学部
日本電気りそなホールディングス
アクセンチュア東日本電信電話
NECソリューションイノベーター国家公務員
みずほフィナンシャルグループ日本IBM
SCSKアサヒビール
東海旅客鉄道いえらぶGROUP
富士通エフサスSCSK
横浜銀行日本ヒューレット・パッカード
キヤノン鉄道情報システム
東日本旅客鉄道富士通

 主要就職先は、両学部の実績とも有名企業が並んでいる。双方とも就職状況は良好といえるだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、こちらもまた変わらない。大学全体として、上場企業の役員をそれなりに輩出しているが、「学閥」というほどではなく、「学閥」によるメリットはあまり期待できない、というのが実情だろう。

<上位校との差について>
 「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、青山学院大や立教大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
立教大学
理学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015505,391391,199
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152920

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較したいデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、青山学院大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。
 なお、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、青山学院大が17位(30ポイント)、立教大が9位(58ポイント)と、高校現場の印象では、立教大がやや優位のようだ。

<まとめ>
 以上、青山学院大理工学部と立教大理学部を比較してみてきたが、ほとんど互角に近い印象を受ける。ただ、学部卒段階で卒業することを見越しているのであれば、立教大の方が良いかもしれない。都心にキャンパスがあることで就職活動の際などに何かと利便性が高いからである。一方で、大学院進学を見越しているのであれば、腰を据えて研究を行える青山学院大理工学部が良いかもしれない。なお、実際に両方に合格した人の選択を見てみてみると、青山学院大理工学部に進学した人が0%、立教大理学部に進学した人が100%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。 これだけの差があるとは今回の比較からは確認できなかったが、受験生は立教大理学部が明らかに上と見ているようである。やはり「東京六大学」のブランドは絶大なのかもしれない。
 しかし一方で、強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。
 理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。