2017年1月13日金曜日

日東駒専対決:駒澤大文学部VS専修大文学部

 今回は、いわゆる「日東駒専」の中で永らくライバルとされてきた駒澤大学と専修大学。両校の「文学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。

※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度駒澤大学
文学部
専修大学
文学部
大学全体の学部生数(人)大学20151523017557
学部の学生数(人)学部201537223175
入試難易度(河合塾)学部201652.550
入試難易度(駿台)学部20165249
入試難易度(ベネッセ)学部20166462
入学者数(人)学部2016946798
競争入試での入学者(人)学部2016714609
競争入試の割合(%)学部201675.50%76.30%
現役入学者の比率(%)学部201690.687.2

 入試難易度は3社とも駒澤大文学部が上の数値を出している。「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、駒澤大文学部に軍配が上がる。
 また、偏差値操作の手法として用いられる、「競争入試の割合」、「入学定員」についてはほぼ違いは見られないことから、基本的には各予備校が出す難易度をそのまま信じてい良いということになる(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。また、募集定員が多い方が偏差値が下がってしまう傾向にあるため、本ブログでは、「競争入試の割合」と「募集定員」を比較するようにしている)。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度駒澤大学
文学部
専修大学
文学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015385442
学生還元率(%)大学201529.10%29%以下
奨学費(円)大学2015417,556,391数値なし
学生一人当たりの奨学費(円)大学201527,417数値なし
卒業率(%)学部20148678
最寄駅の平均家賃(万円)20166.5~73.5~4

 4年間でかかる学費については、駒澤大文学部の方が60万円弱安い。この差はかなりのものであるが、学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
 なお、学生還元率や奨学費のデータについては、専修大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。したがって、比較はできないものの駒澤大のデータを評価すると、MARCHクラスの大学と比べると見劣りするものの、学生還元率・奨学費とも低い数値ではなく、一般的な数値といえるだろう。
 なお、キャンパス周辺の家賃を比較してみると、コスト的には専修大の方が割安となることが予想される。(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、専修大文学部が10%弱ポイント高い。それなりの差があると言えるため、少しの判断材料にはなるだろう。
 このように、コストパフォーマンス的には、学費の差を考えると、駒澤大が有利とみられる。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度駒澤大学
文学部
専修大学
文学部
キャンパス学部2016駒澤【中間型】生田【郊外型】
1年以内退学率(%)学部20140.81.3
4年間退学率(%)学部20145.97.2
入学者の地元占有率(%)学部201627.829.1
女子入学者の割合(%)学部201652.951.4
大学全体の女子学生数(人)大学201658066762
大学全体の男子学生数(人)大学2016942012366
大学全体の女子学生比率(%)大学201638.10%35.40%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20112954
受入留学生数(人)学部20154037
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.10%1.20%
長期留学派遣学生数(人)大学20151115
長期留学派遣の割合(%)大学20150.30%0.30%
ST比(人)学部201552.435.7
専任教員数(人)学部20157189
一人当たり貸出冊数(冊)大学20155.9数値なし

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。駒澤大文学部は、渋谷駅から東急田園都市線で7分の「駒澤大学駅」から徒歩10分の「駒澤キャンパス」で4年間を過ごす。高級住宅街の中の、とても狭いキャンパスであるが、近隣の駒澤公園という「逃げ場所」があるため、さほど気にはならないかもしれない。まさに都市型キャンパスと郊外型キャンパスの間の、「住宅街型キャンパス」といっても良いだろう。
 一方で、専修大文学部は、川崎市の生田キャンパスで4年間を過ごす。小田急線の「向ヶ丘遊園」から徒歩15分の「郊外型キャンパス」となっている。窮屈感はなくのびのび4年間を過ごせるだろう。
 両者を比較すると、キャンパスの立地については、利便性など一般的な価値観では駒澤大に軍配が上がるだろう。しかし、人ごみが嫌いで伸び伸びと大学生活を過ごしたい人にとっては、専修大のキャンパスも悪くはないかもしれない。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、駒澤大文学部が低いことが分かる。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、文学部だけに双方とも女子学生の比率が高く、差はほとんどない。大学全体の女子学生比率においても大きな差は見られない。
 地方出身者、受入留学生の比率もほとんど同じであり、「多様な価値観に触れる」という観点では、互角と言えるだろう。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合は同じである。
 一方で、専任教員一人当たりの学生数(ST比)には明確な差がみられ、専修大の方が数値がかなり低い。したがって、「少人数教育」の環境としては専修大文学部が勝っているといえる(キャンパス環境とあわせて、やはり専修大が「伸び伸び」大学生活を送れそうな印象である)。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、専修大のデータがないため、駒澤大のデータのみだが、5.9冊で多くもなく少なくもなくという印象である。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、駒澤大が7人、専修大が5人であり、高校側の印象では、専修大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、駒澤大が優勢のような印象を受ける。
 とはいうものの、少人数教育の環境などでは専修大が勝っており、教育環境を重視する人は実際にキャンパスを訪ねて比べてみると良いかもしれない。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度駒澤大学
文学部
専修大学
文学部
主要企業400社への就職率(%)大学201610.510%以下
卒業生数(人)学部2015886694
進学者数(人)学部20153422
進学率(%)学部20153.80%3.20%
公務員就職者数(人)学部20154324
公務員就職比率(%)学部20154.90%3.50%
警察官就職者数(人)大学20155756
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし
(1人以下)
4
CA採用数(人)大学2014数値なし
(8人以下)
数値なし
(8人以下)
国会議員の数(人)大学201508
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201527703985
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.180.23
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学201587167
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0060.01

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、駒澤大の方が高い数字が出ている。しかし、伝統的に「文学部」は法学部や経済学部と比べて、大企業への就職は不利と言われており、実際の主要400社就職率は双方とも数パーセント程度になるだろう。
 いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、駒澤大文学部と専修大文学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかを選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、駒澤大文学部の方が高い数字が出ているが、大きな差とまでは言えないため、公務員になりたいからといって駒澤を選ぶ理由にはならないだろう。専修大もそん色ない数値と言って良い。

<主要な就職先の比較>
駒澤大学文学部専修大学文学部
日本郵政グループ日本郵便
みずほフィナンシャルグループトランス・コスモス
ベネッセスタイルケアノジマ
ノジマ日本生命保険
三井住友銀行三井住友銀行
神奈川県教育委員会臨海
JTBグループトラスコ中山
東日本旅客鉄道ファミリーマート
東京都特別区三菱東京UFJ銀行
警視庁警視庁

 主要就職先については、双方とも多様な業種が並んでいる。
 どちらの就職実績が優れているかは、この比較ではわからず、互角と言っていいだろう。

<出世した先輩の多さ>
 双方とも歴史がある大学であり、上場企業の役員などを「大学全体」として輩出している。数を比較すると、専修大がやや優位である。しかし、「文学部」に限ってみると、それほど多くはないことが推測される。したがって、ここで示している数字はあくまで参考値として見ていただきたい。双方とも、大規模大学で卒業生が全国に散らばっており、卒業生のネットワークも期待できるであろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度駒澤大学
文学部
専修大学
文学部
国からの特別補助金
支給額(千円)
大学201595,193170,473
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学2015610

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。
 扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、専修大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。

<まとめ>
 以上、駒澤大文学部と専修大文学部を比較してみてきた。全般的には、難易度通り駒澤大学文学部が優位であると思われる。なお、実際に双方の学部に合格した人の選択を見てみてみると、駒澤大文学部に進学した人が80%、専修大文学部に進学した人が20%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。
 しかし、最後に強調したいのは、文学部の場合は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。
 自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきであろう。