2017年1月8日日曜日

MARCH対決:青山学院大文学部VS法政大文学部

 MARCHの中のライバル校として知られる、青山学院大と法政大。今回は両校の「文学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。

※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。



「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学文学部法政大学文学部
大学全体の学部生数(人)大学20151760127110
学部の学生数(人)学部201532492835
入試難易度(河合塾)学部20166060
入試難易度(駿台)学部20165755
入試難易度(ベネッセ)学部20167170
入学者数(人)学部2016772801
競争入試での入学者(人)学部2016503541
競争入試の割合(%)学部201665.20%67.50%
入試方式の数(競争入試)学部201554
現役入学者の比率(%)学部201690.783

 入試難易度は「河合塾」の数値のみ互角だが、「駿台」と「ベネッセ」はやや青山学院大文学部の方が上の数値を出している。
 また、偏差値操作の手法として用いられる、「競争入試の割合」、「入学定員」についてはほぼ違いは見られないことから、基本的には各予備校が出す難易度をそのまま信じてい良いということになる(MARCHクラスの大学では、競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほどよいのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。同じ理由で、募集定員が多い方が偏差値が下がってしまう傾向にある)。
 したがって、青山学院大の入学者の方が「少しは上」といえるだろうが、その差はわずかで、「青山学院大文学部の新入生の方が法政大学文学部より優秀な学生が集まっているので、青山学院大文学部を選ぶ」という決定打とまではならない。特に、文学部の場合は、「何を学びたいか」を重視して入学する学生が多いと思われるため、入試難易度については考慮に入れない方が無難かもしれない。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学文学部法政大学文学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015444448
学生還元率(%)大学201531.80%38.00%
奨学費(円)大学2015385,868,990994,270,147
学生一人当たりの奨学費(円)大学20152192336675
卒業率(%)学部201482.479.5
最寄駅の平均家賃(万円)20169.5~108.5~9

 4年間でかかる学費については、青山学院大文学部が4万円ほど安いが、ほとんど変わらないと考えていいだろう。
 一方で、学生還元率や一人当たりの奨学費は法政大が多く、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、法政大に軍配が上がる。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみてると、法政大の方が1万円ほど安いが、両大学の場合、徒歩圏内に住むケースは少ないであろう(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、青山学院大文学部が数ポイント高いが、判断材料にはならないほどの差である。
 このように、コストパフォーマンス的にはやや法政大が有利か。しかし、その差は選択材料になるほどではないというのが実情である。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学文学部法政大学文学部
キャンパス学部2016青山【都市型】市ヶ谷【都市型】
1年以内退学率(%)学部20140.31
4年間退学率(%)学部20143.72.9
入学者の地元占有率(%)学部20163226.8
大学全体の首都圏出身比率(%)大学20156661.6
女子入学者の割合(%)学部201673.749.4
大学全体の女子学生数(人)大学2016870710509
大学全体の男子学生数(人)大学2016902718067
大学全体の女子学生比率(%)大学201649.10%36.80%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20112776
受入留学生数(人)学部20154345
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.30%1.60%
長期留学派遣学生数(人)大学20158472
長期留学派遣の割合(%)大学20151.90%1.10%
ST比(人)学部201537.838.8
専任教員数(人)学部20158673
一人当たり貸出冊数(冊)大学20159.77.4

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。青山学院大文学部は、巨大ターミナル駅の渋谷、ハイセンスな街として知られる表参道から徒歩圏内の抜群の立地。表参道周辺の物価は高いだろうが、若者の街・渋谷にも近いため、キャンパス立地の利便性は極めて高いといえる。
 一方で、法政大文学部は市ヶ谷にキャンパスを構えている。ボアソナードタワーを中心として、都市型キャンパスではあるが、周辺はオフィス街の雰囲気が強く、「学生街」としてのイメージはない。とはいうものの、神楽坂が徒歩圏内であったりと、利便性が悪いとも言えない。
 両者を比較すると、キャンパスの立地については、青山学院大青山キャンパスに軍配が上がるだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年以内の退学率は法政大文学部が高く、4年間での退学率は青山学院大文学部が高い。双方に大きな差があるわけではなく、退学率は判断材料にはなりえないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、青山学院大は27位(26ポイント)、法政大が18位(35ポイント)となっており、高校教育の現場においては、法政大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、文学部だけに双方とも女子学生の比率が高いが、青山学院大文学部は7割以上が女子学生という数値が出ている。大学全体の女子学生比率においても青山学院大の方が10ポイント以上高く、大きな差が見て取れる。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、教室内の雰囲気が華やかであることは間違いなかろう。もっとも法政大文学部において、女子学生が低いとも言えないので、あくまでも程度の差である。
 一方で、法政大文学部は、地方占有率が低く、また大学全体としても地方出身者の割合が青山学院大と比べて多い特徴がある。地方出身者にとっては、法政大の方が同郷の仲間がいる可能性が高く、学生の輪に溶け込みやすい可能性はある。そういった意味では、都会的でオシャレなイメージの青山学院大と、バンカラで気骨のあるイメージの法政大のイメージの差がここで出ているのかもしれない。
 なお、留学生比率については法政大文学部がやや高いが、ほとんど差はないため、国際的な教育環境という意味では、互角といっていいだろう。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合を見ると、青山学院大に軍配が上がりそうだ。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、一つの判断材料にはなりうる。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、誤差の範囲内で、「少人数教育」の環境としては互角といえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、やや青山学院大が多い。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、青山学院大が9人、法政大が6人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、青山学院大が9人、法政大が17人であり、高校側の印象では、青山学院大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ。
 その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、青山学院大は21位(24ポイント)、法政大は47位(11ポイント)となっており、同じように、青山学院大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、青山学院大が優勢のような印象を受ける。
 とはいうものの、法政大が絶対的に劣っているわけではなく、例えば東京六大学野球の応援は青山学院大文学部では味わえない、キャンパスライフでの楽しみでもある。また、女子学生比率が高すぎると考える男子学生が、バンカラなイメージを好んで法政大文学部を選ぶことだってあり得る判断かと思われる(卒業した大学名は一生ついて回ることになり、場合によってはその人のイメージを左右することもある)。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学文学部法政大学文学部
主要企業400社への就職率(%)大学201629.822.5
卒業生数(人)学部2015779641
進学者数(人)学部20153532
進学率(%)学部20154.50%5.00%
公務員就職者数(人)学部20151735
公務員就職比率(%)学部20152.20%5.50%
警察官就職者数(人)大学20151657
国家公務員総合職(人)大学201546
CA採用数(人)大学20145020
国会議員の数(人)大学20151011
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201540256971
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.230.26
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)数値なし(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015233341
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0130.013

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、青山学院大の方が高い数字が出ている。ただし、男子学生のみで考えると、ほぼ互角かもしれない。というもの、主要400社の就職率データには「一般職」での就職が含まれており、その場合は「総合職」より入社しやすい傾向がある。青山学院大は先述の通り、女子学生が特に多く、この数字が高く出やすい。そのため、男子学生で「一般職」を選ぶケースはほぼないと考えられることから、「総合職」として400社に就職できる可能性は、ほぼ互角といえよう。
 いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、青山学院大文学部と法政大文学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかを選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、法政大文学部の方が高い数字が出ており、公務員になることを想定しているのであれば法政大を選ぶという選択も有りだろう。
 なお、国家公務員総合職に関しては、「文学部」からその進路に進む学生がほとんどいないと考えられるため、あくまで大学全体の参考値として見ていただきたい。

<主要な就職先の比較>


青山学院大学文学部法政大学文学部
みずほフィナンシャルグループみずほフィナンシャルグループ
全日本空輸日本郵政グループ
三井住友銀行警視庁
JALスカイ三菱東京UFJ銀行
三菱東京UFJ銀行明治安田生命保険
神奈川県市町村都道府県庁
楽天三井不動産リアルティ
日本航空セブン&アイホールディングス
ANAエアポートサービス日本出版販売
りそなグループ東日本旅客鉄道


 主要就職先については、比較で目立つのは、青山学院大文学部の「航空業界」の多さだ。CAの就職実績も多く、CAになりたいのであれば、青山学院大文学部を選ぶと良いかもしれない(ライバルは多いが、OB・OG訪問などがしやすいメリットがある)。
 一方で、法政大文学部は公務員や日本郵政など、安定したイメージの進路が目立つ。もともと大学入学前からそういった志向の人が多いのか、それとも大学入学後にそういった志向になるのかは把握できないが、法政大文学部のカラーとしてそういう傾向があるのは興味深い。

<出世した先輩の多さ>
 双方とも名門大学であり、上場企業の役員などを「大学全体」として数多く輩出していおり、ほぼ互角である。しかし、「文学部」に限ってみると、それほど多くはないことが推測される。したがって、ここで示している数字はあくまで参考値として見ていただきたい。

<上位校との差について>
 以前は文学部は就職で不利になるともいわれたが、双方の大学とも就職実績については良好といえよう。しかし一方で、「早慶」との学歴フィルターの差の存在も忘れてはいけない。エントリー段階では公平であっても、いざ採用実績となるとMARCHがほとんど入っていないケースが、総合商社など一部の業界などに見られる。そういった企業を目指すのであれば、一浪してでも早慶以上の大学にチャレンジした方がいいという判断もありうる。
 また、両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度青山学院大学文学部法政大学文学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015505,391446,556
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152916

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。
 ここで比較したいデータは、大学に国から支給される「特別補助金」の額である。この数値を比較すると、青山学院大が優勢である。
 別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、法政大が12位(54ポイント)、青山学院大が17位(30ポイント)と、法政大が勝っている。

<まとめ>
 以上、青山学院大文学部と法政大文学部を比較してみてきたが、全体の印象としては青山学院大文学部の方がやや優位と感じられる。実際に両方に合格した人の選択を見てみても、青山学院大文学部に進学した人が95%、法政大文学部に進学した人が5%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という顕著な結果が出ている。
 それでも、①公務員志望・②オシャレなイメージに関心があまりないという2つの志向を持っているのであれば、法政大文学部を選択するのも悪くはないとも思われる。実際には95対5のような開きが出るような両大学の差はないのではなかろうか。
 そして何よりも強調したいのは、文学部の場合は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。